慢性痛が治らない…医師選びで押さえるべき3つのポイント

まずは痛みの種類を見分けること
まずは痛みの種類を見分けること(C)日刊ゲンダイ

「慢性痛の治療について、びっくりするくらい知らない医師が多い」と指摘するのは、あるペインクリニックの医師。患者側に打つ手はあるのか。

■「痛みには痛み止め」の考えは古い

 製薬会社「ファイザー」が発表した「痛みの診療における医師と患者の意識差」の調査結果は、患者にとってはガックリくるものだった。診療の満足度について、患者の約半数が「満足していない」と答えたのに対し、医師の8割以上が「満足している」と回答していたのだ。

 日本大学医学部付属板橋病院麻酔科手術部部長の加藤実医師は「慢性痛を掘り下げる文化が(専門医以外の)医師の中にはない」と言う。しかし、だからといって「慢性痛は我慢するしかない」と諦めるわけにはいかない。

 現在、専門医の中での慢性痛に関する治療は大きく前進している。患者がぜひ知っておくべきことは、「痛みには『侵害受容性痛』『神経障害性痛』『精神心理的・社会的要因による痛み』の3つの種類がある」ということだ。

「『痛みにはNSAIDs(痛み止め)』という、オンリーワンの治療法しか知らない医師は多いが、実は痛みの種類によって治療法は異なります。それぞれに応じて選択しなくてはなりません」(加藤医師=以下同)

 侵害受容性痛は、「転んで膝をぶつけて皮膚がすりむけ血が出て痛い」といった痛み。従来、よく使われるNSAIDsなどが効果を発揮する。

 一方、神経障害性痛は「帯状疱疹の発疹はよくなったのに、下着がすれただけでピリピリ痛い」といった状況での痛み。

■医師との会話に「オノマトペ」を活用

 侵害受容性痛は“正常な痛みの伝達系”だが、神経障害性痛は、脊髄や脳神経の機能変化で異常を伝える信号が増幅した“異常な痛みの伝達系”で、NSAIDsではない別の薬が効く。

 このことから、慢性痛の治療では、特に侵害受容性痛か神経障害性痛かの見極めが重要。実際は、精神心理的・社会的要因を含めた3つが複雑に絡み合って痛みが生じているが、どれが最も大きな割合を占めるかを探り、治療方針を決めなくてはならないのだ。

「侵害受容性痛はズキズキ、重苦しいなどの痛み。神経障害性痛はヒリヒリ、ピリピリ、ビリビリ、電気が走るなどの痛みです」

「ズキズキ」「ピリピリ」「ビリビリ」などの用語は、「オノマトペ(擬態語・擬音語)」という。患者も医師も、オノマトペを大いに活用するべきだ。

「患者さんにとって、目に見えない痛みを医師に伝えるのは至難の業。反対に医師が患者の痛みを把握することも同様です。オノマトペは医師と患者が容易に使える“痛みの共通言語”として非常に重要な役割を担っています」

 加藤医師は「慢性痛の治療では、目標設定が大切」と言う。痛みは消えることが当たり前と考えがちだが、慢性痛の場合は「痛みを軽減し、日常生活の活動性を高める」を目標にする。

 具体的には、睡眠障害をなくす、強い痛みを減らすなど、実現可能なところに目標を設定する。できなかったことができるようになることで、その都度自信が出て不安が減り、前向きに物事を捉えられ、痛みの軽減につながる。

 つまり、慢性痛があるなら、「オノマトペなどで痛みの種類を見分け」「それに応じた治療を」「実現可能な目標設定を設けて」対処してくれる医師を選ぶべきなのだ。

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