数字が語る医療の真実

助かるのであればがんは「遅く」見つかった方がいい

「できるだけ早く見つけて、早く治療したほうがいい」――。これが、がん検診のコンセプトです。しかし、今回は「結果が同じなら、できるだけ遅く見つかったほうがいい」という話をしましょう。

「遅く」というのが「早く」の誤りではないかと思われたかもしれませんが、そうではありません。

 具体的な例で考えてみましょう。がんが1ミリの大きさで見つかっても、10ミリの大きさで見つかっても、50ミリで見つかっても、治療によってその後は同じような寿命が得られるとしたら、あなたにとってどれが一番いいでしょうか。

 多くの人は、「そりゃあ、1ミリで見つかる場合だろう」と言うかもしれません。しかし、そこには「より早く見つかった方が寿命が長いに違いない」というような前提をすでにつくっている面があるのではないでしょうか。よく考えてみてください。「寿命が同じ」だとしたら、どうでしょうか。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。