医者も知らない医学の新常識

命に関わることも…失神の原因で意外に多い病気とは

失神はこれまでの常識より怖い症状
失神はこれまでの常識より怖い症状(C)日刊ゲンダイ

 一時的に意識がなくなり、すぐにまた気が付くという症状を「失神」と言います。救急車で病院に運ばれても、病院に着いた時にはもう意識が戻っているのが通常です。救急病院では、脳卒中などの兆候がないかどうかを調べ、疑いがあれば入院して様子を見ることがあります。けいれん発作の可能性や、不整脈や低血糖などの可能性も調べます。

 しかし、そうした検査で異常がなければ、「心配はない」と説明されるのが一般的です。自律神経のバランスが崩れ、一時的に血圧が下がることが失神の原因になっていることが多く、命に関わるような病気ではないからです。

 ところが、その常識を覆すような報告が、今年の「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」という一流の医学誌に掲載されました。入院になった失神の患者さんを精査したところ、6分の1という高い確率で「肺血栓塞栓症」という病気が見つかったのです。

 肺血栓塞栓症はエコノミークラス症候群と通称される病気で、足の血管などに発生した血の塊が肺の血管に詰まって、呼吸困難などを起こすものです。大きな血管に一時的に血の塊が詰まると、それが失神の原因になるのです。

 それを放置すると、今度は命に関わるような症状に進行することがあります。失神はこれまでの常識より怖い症状だと考えておいた方がいいようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。