年を取ったらクスリを見直せ

過活動膀胱の薬は認知症リスクを高める

 前回お伝えしたように、多くの薬は「本来の薬の効果」に加えて「抗コリン作用」を併せ持ちます。その抗コリン作用は、口の乾き、便秘などの副作用だけでなく、使う人や薬によって「認知機能低下、せん妄」などの有害事象が起こる危険性があるのです。

 過活動膀胱に使用する「オキシブチニン」は、他の薬と比べて「脳内(中枢)に入りやすい」という特徴があります。このため、口の乾き、便秘の頻度が高いだけでなく、認知機能低下、せん妄の危険がより高いといえます。

 過活動膀胱とは、膀胱が収縮しやすくなり、おしっこの回数が増える病気です(頻尿)。尿意を我慢しづらくなったり(尿意切迫感)、夜間にトイレの回数が増えたりします(夜間頻尿)。過活動膀胱は年齢とともに増加し、「60歳以上で13・8%」程度の方にみられるようです。高齢者において、珍しい病気ではありません。

 オキシブチニンを服用後、「記憶力の低下、ものごとへの反応が悪くなった高齢者」が実際にいらっしゃいます。この方は、すぐに服用を中止したため、記憶力低下などの症状はすぐに改善しました。しかし、「3年以上、抗コリン作用のある薬を服用した場合、認知症のリスクが増加する」といった報告もあります。つまり、記憶力が「一時的に低下する」のではなく、「認知症になる危険性が増加する」ということです。

 現在、服用している薬を急に中止することは、逆に体調を悪化させる危険があるため、勝手に中止してはいけません。とはいえ、不要な薬を飲み続けないためにも、薬の中止について、定期的に医師や薬剤師に相談することは大切です。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。