受診までの「応急処置」

【低温やけど】損傷が深いと冷やしてもあまり効果なし

思っている以上に皮膚のダメージは大きい
思っている以上に皮膚のダメージは大きい(C)日刊ゲンダイ

 寒さが増し、就寝中に湯たんぽや電気あんか、カイロなどを使うこれからの時季は「低温やけど」に要注意だ。酔っぱらって、電気カーペットの上やストーブのすぐ前で寝込んでしまっても、やけどの危険性がある。

 一般のやけどは「熱い」とすぐ気づくが、低温やけどは「心地いい」と思っているうちに、いつの間にかやけどする。思っている以上に皮膚のダメージは大きく、重症化しやすい。山手皮フ科クリニック(東京・高田馬場)の豊福一朋院長が言う。

「暖房器具が体の同じ部位に触れていると、44度で3~4時間、46度で30分~1時間程度でやけどするとされています。弱火のオーブンで、じっくり時間をかけて焼いているようなものです」

 やけどの重症度は、皮膚の損傷の深さに応じてⅠ~Ⅲ度に分けられる。低温やけどの場合は、気がついたときにはⅢ度に達していることが多いという。ところが皮膚の見た目の症状は、赤みだけで水ぶくれもなく、それほどひどくない。

「Ⅲ度熱傷は、皮膚の表皮、真皮、その下にある脂肪層までやけどで壊死している状態です。こうなると知覚神経まで損傷されるので痛みは感じません。やけどは、痛みが出る方が軽症なのです」

 一般的なやけどの応急処置は、すぐに水道水などの流水で15~20分くらい冷やすのが基本。低温やけどの場合も、冷やさないより冷やした方がいいが、損傷が深いとあまり効果はないという。市販の塗り薬(消炎鎮痛薬など)を使っても、Ⅲ度では薬の成分が深く浸透しないので効かない。 

 脂肪層まで壊死した低温やけどでは、放置して細菌感染などを起こすと壊死が広がる恐れがある。治すには、皮膚科の外来通院を続け、時間をかけて壊死した組織を切除する手術治療が必要になるという。

「低温やけどを起こしたと思ったら、細菌感染させないように水ぶくれがあれば破らず、患部にガーゼなどを当てて早めに皮膚科を受診してください。入浴するにしても3日間は湯船には入らず、シャワーで済ませること。体を温めると患部を悪化させてしまうからです」

 やけどの大きさにもよるが、低温やけどでは治療を受けても皮膚が元に戻るまでに3週間~1カ月以上かかり、傷痕は残るという。特に、重度の糖尿病患者が足をやけどすると治りにくく、潰瘍や壊疽(えそ)の原因になる。就寝時の暖房器具は気をつけて使おう。