ドキュメント「国民病」

【変形性膝関節症】3、4年前から右膝の下にしびれ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 歩くと両膝に痛みが走る「変形性膝関節症」は、早くて40代ごろから始まり、加齢に伴い加速度を増す。

 厚労省の調べでは、潜在的な患者を含めるとその数はおよそ3000万人。東京都内に住む専業主婦、高橋咲子さん(仮名、65歳)もそのひとりで、人生の後半はまさに「変形性膝関節症」の痛みと格闘してきた。

 自宅から近い国立西埼玉中央病院(現・国立病院機構 西埼玉中央病院)の診断をスタートに、これまで数えきれないほどの病院や治療所を訪ねてきた。

 治療は整形外科の「牽引」に始まり、「ヒアルロン酸注射」「ステロイド注射」「痛み止め薬」「湿布薬」「サポーター」それに「マッサージ」。マッサージは評判を聞いて杖を頼りに、海を渡り韓国・ソウルにまで足を運んだ。

 ほか、「カイロプラクティック」「整体」「温泉」「温水プール」には数年間も通い、プールには現在も時々足を運ぶ。

「それでも保存療法で悪化を抑えることができても、膝の痛みが取れないことを実感しています。もう死ぬまで膝の痛みを背負っていくと諦めました」

 こう語る高橋さんは、毎日、朝起きる時が一番つらいという。半身を起こし、両膝をしばらくマッサージしてから起き上がる。さらに両足を折って中腰になる洗濯、掃除、食事を作る姿勢になると、泣きたくなるほどの激痛が走る。

「また3、4年前に膝の痛みと同時に、もっとひどい症状が加わりました。右足の膝下に走るしびれですね。少し歩くと無感覚状態になりました。どう説明をすればいいのか分からない不愉快な症状です。この治療にも随分と病院に通いましたが、改善はしませんでしたね」

■効果を感じたのは40分4000円の整体治療院

 そんなとき、近所に住む友人から、埼玉県所沢市内にあるA治療院を紹介された。

 歪んだ骨を正常に戻す整体を中心にした治療院で、保険適用はない。約40分間で4000円の治療費である。週に1回、予約をして自宅からバスと電車を乗り継いで半年間通院した。

「この治療法が私に合ったのでしょうね、不思議としびれが取れたのです。これはうれしかったですね。看護師もいない治療院で、週に3日休日というやる気のない山登り好きの院長でしたが、確かな腕を持っていました」

 高橋さんには、家族に迷惑をかけてしまう車椅子を利用する前に、「もう一度だけ、杖なしで家族旅行がしたい」という気持ちが強い。

 20余年という長い年月をかけてきた保存療法では、健全な元の足に戻る期待感はほぼゼロである。もし手術治療に切り替えたら本当に治るのか。また、手術のリスクについても不安である。

 そう思うと判断に迷い、まだ手術には踏み切れない。