最悪なら足切断も 「こむら返り」には危ない病気が潜む

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 就寝中などに足がつる「こむら返り」は誰もが経験することだ。一度や二度なら「疲れが出ているのかな」で片づけられる。しかし、頻繁に起こるようだと気をつけた方がいい。背後に命に関わる重大病が潜んでいるかもしれない。東邦大学医療センター佐倉病院循環器科の東丸貴信教授に聞いた。

 こむら返りは自分の意思に反して異常に筋肉が収縮する状態を言う。「お酒の飲み過ぎ」「塩分の過剰摂取」「大量の発汗」「筋肉疲労」「利尿剤などの薬の使用」「冷え」などで起きやすい。いずれもナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラルのバランスが乱れて電解質異常を起こして筋肉の神経がおかしくなるか、血行が悪くなって筋肉が酸欠・栄養不足に陥るかしたケースだ。

「問題はミネラルバランスの崩れや血行の悪さの裏に、重大な臓器の機能低下や病気が隠れているケースが少なくないことです」

 例えば腎臓だ。腎臓はナトリウムやカリウムなどの電解質の吸収、排泄を行っている。その機能が低下すると血液内の電解質の割合が崩れてこむら返りが起こる。

 老廃物を取り除く肝臓も同じで、機能が低下して解毒作用が悪くなると電解質のバランスが崩れて筋肉が異常に収縮する。

 甲状腺機能低下症でもこむら返りが表れるが、これは甲状腺機能低下症が低カリウム血症を招くから。血液中のカリウムが少なくなると神経が興奮し、筋肉がつるのだ。

■早期に発見するには?

 一方、血行の悪さからこむら返りを起こしやすい病気は糖尿病や高血圧のほかに末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)がある。

 末梢動脈疾患は喫煙や生活習慣病が原因で、主に足の動脈に動脈硬化が起こり、狭くなるか詰まるかして血液の流れが悪くなる病気で、さまざまな障害が表れる。

「この病気は4つのステップに分かれています。最初は足がしびれたり、冷えたりするだけですが、やがて痛くて休み休みでなくては歩けなくなります。そのうち、安静時でも痛みが取れなくなる。最後は血液が足の先まで行かないで、潰瘍が出来てついには足が腐ってしまい、足を切断することになります」

 末梢動脈疾患は50代から増えてきて65歳以上の6~15%がかかるといわれている。5年経過で約20%が歩行障害を悪化させ、10%が足の動脈の血液が減少する「重症下肢虚血」と呼ばれる状態になり、数%が足を切断する。

「この病気が恐ろしいのはそれだけではありません。動脈硬化は全身の病気なので、他の動脈の病気も合併します。例えば、心筋梗塞に代表される冠動脈疾患は30%、脳梗塞・脳出血のような脳血管疾患を15%程度合併する可能性がある。発症から5年でこの病気の患者さんの20%が、心臓や脳の血管を患い、そのうち15%が亡くなるといわれています。軽く考えてはいけません」

 こむら返りが末梢動脈疾患のサインのひとつだとは驚きだが、足が痛くて歩けなくなる、というのはよほど症状が進んだ状態。早期に発見するにはどうしたらいいのか?

「あおむけに寝て両足を真上に上げ、第三者にその足首をつかんで回してもらうと、左右の足の色が違ってくることがあります。それは足の血の巡りが違うからで、これで末梢動脈疾患を疑えという人がいます。しかし、正確ではありません。正しくは両足の甲に指3本を当て動脈の脈拍を調べ、左右差を感じたら、末梢動脈疾患の可能性が高いということです」

 こむら返りは足だけでなく、脇腹や首、指など全身で起こる。心臓がつることはないのか?

「心臓の場合は狭心症や心筋梗塞で胸がつる症状が出ることがあり重症では心室細動という心室が小刻みに震え、脳や体に血液を送り出せなくなる危険な不整脈が起こることがあります」

「たかがこむら返り」と言っている場合じゃない。

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