役に立つオモシロ医学論文

腰痛には“プラセボ”が効く?

「プラセボ効果」をご存じでしょうか。プラセボとは、有効成分を含まない薬のことを指します。通常は乳糖やデンプンなどでつくられた錠剤やカプセル剤のようなもので、理論上は人に投与しても何の影響もありません。ところが、プラセボを投与すると、例えば痛みなどの症状が改善することがあります。このように、有効成分を含まないプラセボがもたらす治療効果を「プラセボ効果」と呼びます。

 慢性的な腰痛を訴える人に、プラセボを投与するとどのくらいプラセボ効果が表れるのかを検討した研究論文が報告されました。

 この論文は「国際疼痛学会誌」(2016年10月13日電子版)に掲載されたもので、3カ月以上続く慢性的な腰痛を持っている97人(平均44歳)が対象となりました。

 被験者は、「プラセボであることを知ったうえでプラセボを服用するグループ」と、「標準的な腰痛治療を受けるグループ」にランダムに振り分けられ、3週間の治療が行われました。

 腰痛の重症度は、軽症から重症まで0~10点で評価し、研究開始時からの点数変化を検討しています。

 その結果、腰痛の重症度は研究開始時に比べ、標準的な腰痛治療を受けたグループでは5%改善したにとどまりましたが、プラセボを服用したグループでは28%も改善しており、グループ間の差は統計的にも有意でした。

 さらに、腰痛に関連した身体機能の障害も標準治療を受けたグループではほとんど改善しませんでしたが、プラセボを服用したグループでは29%改善していました。

 プラセボであることを知ったうえで服用しても、これほどまでに治療効果が示されるとはやや驚きです。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。