40代で「変形性膝関節症」と診断された専業主婦の高橋咲子さん(仮名、65歳)は、20年近く両膝の痛みと闘ってきた。もっぱら、治療は痛み止め薬や膝に巻き付けたサポーター等の保存療法である。
「東京大学医学部22世紀医療センター」によると、変形性膝関節症の患者数は男性860万人、女性1670万人の総計2530万人(2007年調査)で、女性が圧倒的に多い。
高橋さんは、「この20年、ありとあらゆる治療を試みてきました。しかし結果的には進展はなく、60歳を越えて歩行は杖の助けを借りるようになりました」と言う。
最初、診断された「国立西埼玉中央病院」(所沢市=現在・国立病院機構 西埼玉中央病院)で「牽引」の治療(3割負担、約300円)を行い、「痛み止め薬」と「湿布薬」(同、約1000円)をもらった。
しかし、思ったほど効果は感じられなかった。今度は地元のクリニックを訪ね、痛みや炎症を抑える「ヒアルロン酸」や「ステロイド」(3割負担、1回1000円)を膝に打った。少しばかり痛い注射である。
美容皮膚科などでよく使用されるヒアルロン酸は、皮膚、筋肉、軟骨などを構成する成分が含まれた医薬品である。
「週に1回クリニックを訪ね、その注射を打っていました。直後は膝の痛みが少し治まりますが、スムーズに歩けるのはその日の1日ぐらいでしたね。注射の1クールは10回でしたけど、1週間に1回、やがて2週間に1回のペースになり、この治療法も持続の効果がなく、やがてやめてしまいました」
■6種類のサプリメントは合わなかった
次いで、高橋さんが頼ったのは「サプリメント」。新聞や雑誌広告、健康専門誌、それにネットで検索するなどして、変形性膝関節症に効くという「サプリメント」類を地元のドラッグストアや通販で片っ端から購入した。
商品の説明には、「すぐに膝の痛みが解消!」「効果がなかったら商品代全額返却!」といった頼もしい宣伝文句が躍り、元気で歩いている婦人の写真が紹介されている。
「商品名は伏せますが、有名メーカーから初めて聞くような製造会社など、全部で6種類のサプリメントを試しました。金額も1000円から高いので6000円ぐらいだったでしょうか。1つのサプリメントを半年、あるいは1年間飲み続けてみました。個人差もあるのでしょうけど、私にはまったく効果がありませんでしたね」
高橋さんの自宅には今、途中で飲むことをやめたサプリメント類が、山のように残されている。
ドキュメント「国民病」