Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

りりィさんのケース 肺がんの放射線治療は通院で治療

享年64だった(C)日刊ゲンダイ

 3000万円もの薬代(今は半分)が話題になった抗がん剤オプジーボは、皮膚がんの一つメラノーマに適応され、肺がんにも適応が拡大されました。りりィさんのような非小細胞肺がんの末期は、この薬のターゲットですが、がんが縮小した割合は2割ほど。承認前の臨床試験でほかの抗がん剤に比べて優れたデータが得られたとはいえ、“効く人もいる”というのが現実です。

 肺がんは年間約6万5000人の命を奪い、死因は男性が1位、女性が2位。ステージ1の5年生存率は約83%ですが、全体だと約44%。早期発見の啓発が進む今でも、末期で見つかるケースが多く、全体の5年生存率が低くなっていることがわかるでしょう。

 治りやすいといわれる胃がんと大腸がんのデータと比較すると、その差は歴然。胃がんと大腸がんのステージ1は各約97%、約99%、全体だと各約73%、約76%です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。