Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

りりィさんのケース 肺がんの放射線治療は通院で治療

享年64だった(C)日刊ゲンダイ

■喫煙とは関係ないタイプが増えている

 肺がんの死亡者数は80年代まで右肩上がりでしたが、90年代後半から男女ともほぼ横ばい。禁煙が進んだためです。それでも肺がんと診断されてからの経過がよくないのは、たばこと関係ないタイプの肺がん・肺腺がんが増えているのです。男性は4割、女性は7割が肺腺がんとされます。しかも、進行が速く、転移した状態で見つかる方も少なくありません。りりィさんは、肺腺がんだった可能性もあります。

 りりィさんは、保険が利かない自費治療を選択されたようですが、保険が利く放射線は費用が安く、仕事帰りに通院で治療を受けられる病院も。サラリーマンががんにかかると、3人に1人が離職。平均年収は395万円から167万円に低下するという調査もあります。

 がんと長く向き合う上では、仕事を続けられるような治療を選ぶことが大切。その点でも、通院で治療可能な放射線は、優れています。早期なら治療効果は手術と同等です。末期なら、骨転移による痛みや脳転移による麻痺を取ったりするなど症状を和らげることもできるのです。

 早期から末期までオールラウンドに使える放射線治療は、もっと選択されていいと思います。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。