皮膚疾患には、本人が重篤性を自覚していないものが多い。「かくた皮膚科クリニック」院長の角田美英医師に聞いた。
■じんましんで死に至る
4~5人に1人が生涯に一度は経験するといわれるのが、じんましんだ。発症者の中には、「しばらく様子を見よう」「1日経ったら、じんましんが消えたから問題なし」などと放置する人が少なくない。
「じんましんは、たいてい24時間以内に症状が消えます。しかし、それは『治った』のではありません」
じんましんは、何らかの刺激で皮膚の肥満細胞からヒスタミンと呼ばれる物質が放出され、血管に作用して皮膚のふくらみや赤みを生じさせる。また、神経に作用してかゆみを引き起こす。
皮膚のふくらみ、赤み、かゆみはいつの間にか消えるが、放出されたヒスタミンは体内に残る。そのため、抗ヒスタミン剤による治療は症状消失後も2週間程度続けなければならない。
それをしなかった場合、大きな問題点は2つある。1つは、慢性化する点。1カ月以上、症状が出たり消えたりする。抗ヒスタミン剤を数カ月以上飲み続けなければならず、年単位で薬の処方のために受診する人もいる。
もう1つは、アナフィラキシーショックの危険性だ。呼吸困難などで命を落とすこともある。
「じんましんは7割が原因不明ですが、それでも治療は可能。症状が消えた後も診断できるので、必ず皮膚科の受診を」
■湯たんぽで皮膚壊死
これからの季節に患者が増えるのが、湯たんぽによる低温やけどだ。
「低温やけどは、通常のやけどとは違い水疱ができず、自覚しにくい。しかし、皮膚の深部にやけどを負っているので、早く処置しなければ、皮膚が壊死してしまいます」
低温やけどをしたばかりの頃はうっすら皮膚が赤くなっている程度だが、しばらくすると、髪の毛の黒色と同じくらいまで真っ黒に変色する。こうなってから、ようやく深刻さに気づく患者は非常に多い。
「皮膚がすでに壊死しています。皮膚の壊死部分をこそぎ落とし、肉芽が盛り上がるまで待たなければならず、治療期間は平均して2~3カ月に及びます」
角田医師は、「そもそも湯たんぽは勧めていません」と話す。
■冬の乾燥だと思っていたらアトピー性皮膚炎
アレルギー疾患である喘息は、子供の頃はなんともなくても成人になってから発症する人が少なくない。アトピー性皮膚炎も同様で、成人で初めて発症する人がいる。
「冬の乾燥で皮膚のバリアーが壊されるのが原因です。単なる皮膚の乾燥では、カサカサして粉を吹く程度ですが、アトピー性皮膚炎であれば、湿疹病変が見られます」
アトピー性皮膚炎であれば、治療が遅れると、患部の湿疹がひどくなり、ジュクジュクしてくる。最初は肘の内側や首の下、膝の裏側などほんの一部だけだったのが、場合によっては広範囲に広がり、目立つようになる。
「軽症だからこそ気がつきにくいのですが、治療を受けずにいれば、重症のアトピー性皮膚炎に移行するかもしれません」
乾燥部分があり、粉を吹くだけでなく湿疹のようなものができていれば、アトピー性皮膚炎を疑ったほうがいいかもしれない。