数字が語る医療の真実

がん検診が過大に評価されるカラクリ

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写真はイメージ(提供写真)

 がん検診の害の問題についてばかり取り上げてきました。そこには「害の問題は分かりにくく、隠されやすい」という背景があります。

 逆にがん検診の効果については、「分かりやすく、過大に評価されることが多い」現状があります。今回からは、がん検診の効果がどのように過大評価されているのかを見ていきます。

 ただ、過大に評価といっても意図的なものばかりではありません。よほど気をつけて研究しないと、自然にがん検診の効果を大きく見積もってしまう面もあるのです。問題は結構複雑です。

 そのひとつに、がん検診を受けたグループの生存期間が、早期発見の分、長く見積もられるということがあります。

 たとえば「症状が出てから死ぬまでに3年かかるがん」があったとしましょう。このがんを症状が出る2年前に見つけたとすると、がん検診を受けた人の生存期間は2年間長くなります。

■受診した人の生存期間はもともと長い

 つまり、がん検診を受けて見つかったがん患者と、症状が出てから医療機関を受診して見つかったがん患者では、症状が出てからの生存期間が同じだとしても、症状が出るまでの期間分、必ずがん検診で見つかった人のほうが生存期間が長いことになります。

 がん検診の効果を見積もるとき、がん検診に効果がまったくないとしても、がん検診で見つかったがんの人は生存期間が長いのです。このことはきちんと理解しておく必要があります。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。