気づかぬ間に腎機能に障害も…頻尿よりも怖い残尿の悩み

少しでも気になったら放置してはいけない(写真はイメージ)
少しでも気になったら放置してはいけない(写真はイメージ)(C)日刊ゲンダイ

 いつごろからか湧き上がる頻尿の悩み。しかし、怖いのは頻尿より残尿だという。

「昨晩も何回もトイレで目が覚めたよ」「俺なんて、そんなのしょっちゅう」「年取ったら頻尿は仕方ない」――。こんな会話を交わしたことはないだろうか? 

 中高年が気にする頻尿だが、それに「待った」をかけるのが、「前立腺がんは怖くない」などの著書がある東京慈恵会医科大学泌尿器科主任教授の頴川晋医師。

「回数という分かりやすい指標があるため『頻尿』を気にされる方は多いのですが、もっと注意しなければならないのは『残尿』。泌尿器科医の合言葉には『残尿は危険』というものがあるのです」

■「頻尿」と思い込んでいるのは……

 膀胱の筋肉が弱ったり、前立腺肥大の症状のひとつとして起こる残尿は、頻尿と異なり気がつきにくい。

 膀胱に200ミリリットルの尿がたまって尿意をもよおすとすると、何らかの原因で150ミリリットルしか出なければ、残りの50ミリリットルが膀胱に残っているので残尿感が生じる。

「ところが、膀胱には順応性があり、次第に残尿感が麻痺していきます。しかし、残尿を起こした原因はそのままなので、50ミリリットルから60ミリリットル、70ミリリットル……と残尿量が増え、慢性化していきます。残尿がある分、早く膀胱が満タンになるので頻尿になります」

 つまり、頻尿と思い込んでいるのは、実は残尿だったということも。いや、むしろそれは、想像しているより多いと頴川教授は指摘する。ちなみに、「残尿感が麻痺」と述べたが、残尿と残尿感はイコールではないので、「残尿感がない=残尿がない」とは言い切れない。

 知らないうちに「残尿」という問題点を抱えてしまうわけだが、放置しておくと深刻だ。

 残尿が続くと、尿道に一部存在する常在菌が正常な量を超えて繁殖し、膀胱炎、前立腺炎などの炎症を起こす。それが高じて腎臓にまで菌が広がり、腎盂炎を発症する。

「急性の前立腺炎や腎盂炎は、抗生物質で対処できない場合もあります。すると、敗血症を起こし、命を落とすケースもある。特に、残尿は中高年に多く見られるので、ほかの臓器にも問題を抱えている場合も多く、危険です」

■腎機能が障害されるケースも

 残尿で膀胱がどんどん充満していくと、膀胱の圧力が高まり、腎臓に慢性的に逆圧がかかり、腎臓がパンパンに腫れた状態になる。腎臓の機能廃絶に陥り、最悪、腎不全で透析という結果に至ることもある。

「明らかな残尿感があれば手を打つかもしれませんが、それも軽いことが多く、残尿があることになかなか気がつかないのが問題。これまで、内科医の先生で腎臓が悪くなってしまったという方も何人か診てきました。専門家として知識のある医者ですら残尿に気づかず、腎不全になってしまうのです」

 打つ手はないのか? ひとつは、「頻尿」があるなら、その背景に「残尿」がないかを泌尿器科で調べることだ。

 頻尿は1日10回以上トイレに行っている場合に疑いが生じる。

 もうひとつは、残尿感は麻痺していくが、最初は実感があるはずなので、わずかでも「尿が残っている気がする」と感じたら泌尿器科へ。

「かつては尿道から管を入れて調べていました。今は、超音波で簡単に診断できます。痛みは全くありません」

 最も危険なのは、「年だから下半身の悩みもあって当然」と考え、放置することだ。

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