ドキュメント「国民病」

【変形性膝関節症】手術は膝関節を丸ごと取るわけではない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 変形性膝関節症の手術は、「怖い」というイメージが強い。手術を受ける人の多くが中高年で、「失敗すると歩けなくなるのでは?」との不安がつきまとうからだ。実際はどうか? 「コンピューター支援システムによる新たな人工関節置換術」など先進医療を導入し、高い評価を得ている東京慈恵会医科大学付属病院(本院=新橋)整形外科の斎藤充准教授(診療副部長)に聞いた。

■入院期間は両足で20日~30日間

Q1 変形性膝関節症の患者の多くが、手術をしない「保存療法」に頼っているのは、手術が怖いというイメージが強いからですか。

「それは誤解です。変形性膝関節症の手術にひるんでしまう理由は、おそらく『関節をブロックで大きく切り出し、大きな人工関節を埋め込む』というイメージを抱いているからでしょう」

Q2 実際、どのような手術が主流を占めているのでしょうか。

「MRI(磁気共鳴画像装置)やCT検査で写した画像をコンピューターに取り込み、最適の骨切り位置が分かるガイド用の機器を準備します。これに合わせて骨を切り、残された骨に人工関節をきれいにはめ込みます。簡単に言いますと、虫歯など老朽化した歯の悪い部分を正確に削り、その後、金歯をかぶせて正常な働きをする歯に戻すと思ってください」

Q3 術後はどのようなリハビリテーションを行いますか。

「手術後1日目は、車イスに自分の足で乗車し、可動域訓練を開始します。2日目から歩行訓練を始めます」

Q4 入院期間はどのくらいでしょうか。

「片側の足の手術ですと20日間前後。両足同時の手術では20~30日程度です。いたずらに退院を早めることはしません。入院期間は掃除、洗濯など自宅での生活に自信が持てるまで十分なリハビリを行います。通院リハビリの必要はありません。ただ、家族の都合でより早期の退院を希望する患者がいたら、無理に入院の継続は強要しません」

Q5 術後はどこまで回復しますか。

「散歩はもとより、水泳やゴルフ、スキーだって可能ですよ。また、かつてのO形に変形した足の形も改善されて、若いころのような足になります。私の患者さんで術後、それまではけなかったスカートや細身のパンツルックを着用している人もたくさんいます」

Q6 術後、正座や横座りも可能でしょうか。

「手術前に正座が可能だった方は可能です。しかし、手術前にすでに正座ができないほどに曲がらない膝の場合、手術によってよく曲がるようにはなりますが、正座までは到達しない方もいらっしゃいます。しかし、歩くときには体重をかけたときの痛みがなくなりますから、平地や階段など、歩きやすさを実感できます」