Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【胃がん対策】家族で除菌 早期発見より確実な予防を

胃炎なら保険でOK(C)日刊ゲンダイ

 それだけに、胃がんを食い止めることは、医学的にも社会的にも大きなインパクトがあります。佐賀や大分、兵庫、大阪、長野、山形、秋田、北海道などの市町村では、中学生らを対象にピロリ菌の検査と除菌に取り組む自治体が増えているのです。

■欧米では白血病より稀

 尿検査からピロリ菌感染が疑われると、2次検査が行われ、それで陽性だと、除菌治療の対象になり、費用は自治体の助成が受けられます。治療は、成人と同じ抗生物質を1週間服用するだけです。下痢や味覚障害などの副作用もありますが、試してみる価値はあるでしょう。

 ピロリ菌は井戸水などから感染。60歳以上の方は8割が感染していますが、冷蔵庫が普及し、衛生状態がよくなったことで、中学生のピロリ菌感染率は5%ほどに低下。それでも胃がんは95%がピロリ菌感染が原因で、感染から20~30年を経て胃がんを発症すると分かっていることから若い人の除菌が検討され始めているのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。