ドキュメント「国民病」

【変形性膝関節症】手術に伴う最大リスクは感染症

感染後2~3週間なら洗浄だけでOK
感染後2~3週間なら洗浄だけでOK(C)日刊ゲンダイ

 加齢に伴い急増している「変形性膝関節症」に苦しむ罹患者は、軽く1000万人(厚労省調べ)を突破している。

 その大半は、痛み止め注射やサポーターなどの保存療法に頼っている。では、手術治療はどうなのか。先週に引き続き、変形性膝関節症手術の先端を走る「東京慈恵会医科大学付属病院」(本院・新橋)整形外科の斎藤充准教授(診療副部長)に、手術の「リスク」について聞いてみた。

■感染後2~3週間なら洗浄だけでOK

Q1 「人工膝関節置換術」(TKA)など、人工関節の手術で一番のリスクはなんですか。

「変形性膝関節症に限らず、どんな手術でもリスクは感染(化膿)ですね。そのリスクは1%。100人に1人ぐらいといわれています」

Q2 もし感染した場合、どのような治療があるのでしょうか。

「膝の皮膚の周囲の感染であれば、洗浄などで改善します。しかし、細菌が人工関節に達した場合は、できるだけ早期に感染した部分を洗浄する必要があります。早期に対応を行うことが再置換術(人工関節を入れ替える)を回避するのに重要です。このため、退院する患者に必ず『痛みや発熱などがあれば、すぐに来院してください』と言っています。感染してから2~3週間以内なら、感染した部分を洗浄することによって解決します」

Q3 術後、何年かして人工関節に不具合が生じた場合、どのような治療があるのですか。

「人工関節の金属部分はサビたりすることはなく、半永久的に問題が生じることはありません。しかし、人工関節に使用される人工軟骨部分のポリエチレンは、術後20~30年で一部摩耗することがあります。一番の問題は骨粗しょう症によって人工関節の周囲の骨が痩せてきて、人工関節が緩んでくるケースです。これは、20~30年で100人中5人程度です。ですので、手術前に骨粗しょう症の検査を行い、手術前から骨を強くする治療を行っています。また、術後の患者には1年に1回の定期検診を行い、骨粗しょう症の治療を継続しています」

Q4 術後のリハビリはハードだと聞いていますが。

「術後は、専門にトレーニングされたリハビリ担当者が連日訓練を行いますが、種々の痛み止め対策を行うため、痛みは伴いません。術後翌日から始めます。私の手術では特殊な出血防止対策をとり、また、術後のドレーン(体腔内の水分、血液、リンパ液などを抜く管)を使用しませんので、術後の貧血も起こりません。このため、自分の血をためる自己血貯血や輸血などはしません。これはカナダ留学中に学んだ医療技術ですが、早期リハビリを行い、安定した歩行を獲得するために大切なことなんです」