筋肉痛に湿布では不十分 中高年の運動後の痛みには漢方薬

中高年の運動後の痛みは老化現象が関係
中高年の運動後の痛みは老化現象が関係(C)日刊ゲンダイ

 運動や山歩きなど、いつも以上に体を動かした後、体の痛みが出てきたら、湿布より漢方薬がいい。

「中高年の運動後の痛みは、若者と違い、老化現象が関係しています」

 こう指摘するのは、筑波大学付属病院臨床教授で日本東洋医学会専門医の加藤士郎医師。運動後の体の痛みには湿布薬がよく用いられるが、それで患部を温める・冷やすだけでは不十分。“中”から効かせなければダメなのだ。

■腰などの痛み+疲労感と冷え

 漢方薬を選ぶ場合、スポーツ後の体の痛みに加え、さらにどういった症状があるかに着目しなくてはならない。痛みとともに、疲労感や冷えがあれば、お勧めなのは「八味地黄丸」だ。

「8種類の生薬が含まれており、そのうち地黄、山茱萸、山薬の3種が疲労を回復させます。さらに附子、桂皮という2種の生薬が体を温め代謝を高めます」

 40代を過ぎると、自然の摂理では「初老」に分類され、代謝が落ちる。すると体が冷えやすく、疲労物質である乳酸が体外に排出されにくい。乳酸は体を冷やす作用があるので悪循環だ。八味地黄丸は、それらの対策に有効なのだ。

 八味地黄丸は、乾燥した生姜と蜂蜜を入れた紅茶とともに飲むとより効果的。生の生姜は“健胃薬”にはならないので、必ず乾燥したものを。

■腰などの痛み+体が火照る、むくむ

「体の火照りやむくみを伴うようなら、水分の代謝を良くして余分な熱を取り除く漢方薬が適しています。『六味丸』を常温の水で飲むといいでしょう」

■座骨神経痛など慢性的な痛みが続く

 関節痛、神経痛などに効く「疎経活血湯」を。

「17種類の生薬の中には、痛みを和らげる作用のあるものがたくさん含まれています。徐々に痛みを和らげます」

 さゆで飲むことがお勧め。

■捻挫や打撲がある

「治打撲一方」という漢方薬を試してみよう。

「代謝を高め血行を良くする桂皮、血液の静脈内の滞留を防ぐ樸樕など7種類の生薬で構成されています。常温の水で飲んでください」

 漢方薬を用いる時は、次の3点を念頭に置く。

 まず、漢方薬は「飲めばOK」ではなく、痛みを起こしにくい生活スタイルの実践が不可欠。

「軽い運動、代謝を高める食事、ストレスをためない社会生活を心掛ける。運動後の痛みはひどくなりにくく、漢方薬も速やかに効きます」

 軽い運動は「1駅歩く」「会社から遠い店へ昼食を食べにいく」など、日常的に活動量を高める工夫をすればいい。代謝を高める食事は、生姜やネギ、加熱した根菜料理など体を温める作用のあるものを食べる。ストレスをためない社会生活は、寝る前にゆっくり入浴してリラックスする、体を温かくして好きな音楽を聴く、などでOKだ。

 次に、漢方薬を試す前に器質的疾患がないかを検査でチェックする。

「中高年では、『腰痛がひどい』と思っていたらがんの骨転移だったというケースもあります。重大病の可能性は早い段階で除外すべきです」

 さらに、漢方薬は2週間もすれば効果が出る。1カ月経っても効いているのかわからない場合、漢方薬が適していない可能性が高い。漫然と飲まず、漢方の専門医、あるいは漢方薬剤師に相談しよう。

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