体の異常を伝えるサインかも…臭い唾液に潜む“重大病”

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 あなたは、くしゃみをするたびに周囲の人に顔をしかめられてはいないだろうか? 飛び散った唾液のにおいは、背景に口腔内のトラブルが潜んでいるだけでなく、消化器や呼吸器などの重大な病気が潜んでいる可能性もある。どんな病気が潜んでいるのか?

■健康な人の唾液は無臭

「寒いのにくしゃみをするたびにカミさんに窓を開けられるんです」

 こう言うのは貿易会社勤務の田中勇太郎さん(仮名、50歳)だ。若いころはひと時も離れなかった妻が、いまは顔を近づけるのも嫌がり、ここ数年キスしていない。

「あまりに嫌がるので、浮気でもしているのか、と問い詰めたら“だってあなたのつばのにおいが臭いんだもの”と。参りました」(田中さん)

 唾液が臭い人は多い。ある調査によると、キスをする際に気になる第1位は口臭だそうだが、それは唾液のにおいと言っていい。自由診療歯科医で「八重洲歯科クリニック」(東京・京橋)の木村陽介院長が言う。

「唾液は血液をもとにして唾液腺でつくられ、分泌されます。99・5%は水分です。口腔内の粘膜を覆うことで、咀嚼や嚥下、発音を容易にするほか、口腔内を洗浄したり、食べ物を溶解して味覚を助けたりします。抗菌作用もあります。本来においはしないのですが、虫歯、歯周病、舌苔が肥厚していると、強いにおいがします」

 例えば虫歯や歯周病は、歯周ポケットや虫歯の穴に巣食った細菌や食べかすの腐敗臭を発する。卵や魚の内臓が腐敗したようなにおいだ。

 歯の根の先に膿がたまる歯根嚢胞から膿が出ている場合は、濡れぞうきんのようなにおいを放つ。

「唾液には緩衝能力といって、口の中に入ってきたものを中和する能力が備わっていますが、疲れやストレスがあると、この能力が落ちて唾液が常に酸性になり、においを発しやすくなります。しかし、唾液自体が臭くなる最大の原因はドライマウスです。口の中が乾くことで嫌気性細菌が繁殖しやすくなります」(木村院長)

 とくに舌の表面の角質が伸びて硬くなり、そのすき間に細菌や食べかすがたまった舌苔は、卵の腐ったようなにおいが一層強くなる。

■肝臓、腎臓も危ない

 これらは歯科治療をすれば改善するが、においの原因が体のほかの部分にある場合はそうはいかない。体の異常を知らせるにおいは血液に溶け込んで全身をめぐり、それが唾液腺で唾液に移行し、口いっぱいに広がる。

「一番わかりやすいのが糖尿病の人の唾液です。リンゴの腐ったような甘酸っぱいアセトン臭と呼ばれるにおいがします。糖尿病の人は血糖を取り込みエネルギーに変える役割を担うインスリンが不足するため、脂肪やタンパク質を分解してエネルギーをつくり出します。このとき中間代謝産物としてつくられるのがケトン体で、これにアセトンが含まれているのです。ダイエットでムリな食事制限をした人も同じにおいがします」(木村院長)

 ドライマウスは糖尿病以外にストレス、口呼吸、シェーグレン症候群などのほか、降圧剤や利尿剤、花粉症の薬など、薬が引き金になるケースもある。

 鼻の奥にある副鼻腔に炎症が起きる副鼻腔炎も唾液を臭くする原因だ。鼻が詰まって口呼吸になりやすいうえ、のどに落ちた膿が口のなかで混ざり、唾液が臭くなる。

「肝臓や腎臓が悪いと、体内の毒素を分解・排出しきれず、その毒素が血液を通して唾液に溶け込みにおいを放つ。アンモニアやニンニク、カビ、腐った卵のようなにおいがします」(木村院長)

 では、唾液のにおいを消すにはどうしたらいいのか? 原因となる病気を治すことが一番だが、一時的でも口腔内の細菌を一掃することだ。

「唾液のにおいのもとになるのは嫌気性細菌です。これに効くのが次亜鉛酸ナトリウムのうがい水です。清涼剤の入った洗口剤を使うのもいいでしょう。ガムをかんだり、持病の薬を選び直して唾液量を確保するのもいいかもしれません」(木村院長)

 これであなたもキスできる!?

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