塗り薬登場で劇的進化 ニキビ肌は「皮膚科」で治す時代

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 思春期や20代のころ、ニキビ肌に悩まされた人は多いだろう。いま、ニキビ肌の治療は、私たちがニキビ肌のピークだったころと比べ、大きく進化している。

 10年前まで、ニキビで皮膚科を受診する人は1割程度だった。

 受診しても、「皮膚科でニキビが良くならない・治らない」というマイナスの感想を抱かれた人がほとんどではないだろうか?

「当時は抗菌薬と抗生物質くらいしかニキビの薬がなく、皮膚科でのニキビの治療手段は非常に限られているのが実情でした。正直、確かに皮膚科でニキビを治療するのは困難だったのです」

 こう話すのは、ニキビ治療に力をいれる「かくた皮膚科クリニック」の角田美英院長だ。

■痕残らず、新たにできるのも防ぐ

 ニキビ治療に大きな変革が訪れたのが、2008年。これまでとは作用機序が違う画期的な塗り薬、「ディフェリンゲル」が登場したのだ。レチノイド製剤と呼ばれるもので、有効成分が顆粒細胞から角質細胞になるのを抑制して、ニキビを予防・治療する。

「赤く炎症する前のニキビで、白ニキビ、黒ニキビといわれる面ぽうの段階から使用できます。結果、ニキビ痕も残らない。その効果は高く、『ニキビが皮膚科で治る』と皮膚科医が自信を持って言えるようになったのです」

 ただし、ディフェリンゲルには副作用がある。赤み、乾燥、ピリピリ・かゆみなどの皮膚刺激などで、かなりの率で見られるという報告もある。ニキビ治療の目的が「ニキビ痕を作らない」「今後、長期的にニキビが新しくできないようにする」であることを考えると、ディフェリンゲルの副作用は、塗り薬を使用している数カ月の間だけの持続だ。患者への十分な説明が大前提だが、メリットに比べ、副作用は大きな問題にはならないとみるニキビ治療の専門家は多い。

 さらに2015年以降、「過酸化ベンゾイル」という塗り薬が登場し、またニキビ治療は進歩した。現在は、ディフェリンゲルに加えて、過酸化ベンゾイルが主流になりつつある。

「ディフェリンゲルが進化したもので、やはり白ニキビ、黒ニキビの段階で治すことができますし、ニキビをできにくくする効果も期待できます」

■親世代の「皮膚科では治らない」の思い込み

 白ニキビ、黒ニキビから治療を開始した場合でだいたい1~2カ月、赤く炎症した状態からの治療では3カ月程度が治療期間の目安だ。その後、「維持療法」として、ニキビをできにくくするために1~2年間、塗り薬を使いつづける。どの疾患でも言えることだが、早い段階で治療を開始したほうがきれいに治る。

「ニキビ治療の塗り薬は7種類あり、すべて保険適用です。さらに、保険適用の治療には、漢方薬やビタミン薬もあります。数種類組み合わせて治療を行うこともあります」

「大人のニキビ」も基本的には同じ。ただ、ホルモンバランスの乱れなどが関係していることもあり、患者の希望も聞いた上で、低用量ピルなどの処方も行う。

 劇的に進化したニキビ治療だが、ニキビで皮膚科を受診する人は3割程度と少ない。子供がニキビに悩んでいても、親世代の「皮膚科でニキビは治らない」との思い込みから、皮膚科受診につながらないのが要因のひとつと考えられている。

 ニキビ痕に対する薬はまだ登場していない。後々まで後悔するのは当事者。もし、子供にポツンとニキビができているのを見つけたら、皮膚科受診という手もあることを伝えてはどうだろう。

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