病院は本日も大騒ぎ

一度診ただけで病名が半分当てられたら名医

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 関東圏のクリニックから総合病院に転職して二十余年になる看護師のマサヨです。時々、救急車で病院に搬送されてくる患者さんの「たらい回し」問題がニュースになります。似たようなケースはいくらでもあります。

 これは厳密に言うと、たらい回しではありませんが、外来病棟でこんなことが起こり、ナースセンターで討議のテーマになりました。

 ある日のこと、20代の神経質そうな若い奥さんが、3歳になる幼い女の子を連れて「小児科」の外来を訪ねてきました。

「子どもの歩き方がおかしいから診察をしてください」と言うのです。

 確かに、その女の子の歩き方を見ますと、少しおかしくて、肩を揺するような格好で歩いておりました。

 診察で足の部分をCTスキャンし、診察室を何度か歩かせた上で、医師は「骨もしっかりしておりますし、まあ、心配するほどでもありません。大きくなったら改善しますよ」と診断しました。

 でも、お母さんは納得せず、病室から動こうとしません。困った医師と子どもに付き添っていた看護師は、それなら「整形外科を訪ねてください」と担当医を紹介しました。

 翌日になってその奥さんは、再び子どもを連れてきて、「整形外科」の診察を受けたのです。

 もうCTスキャンを撮っておりますから、小児科から回された診断画像を見ながら整形外科医も、「大丈夫ですよ。心配しないでください」と同じ診断を下しました。

 でも、お母さんはやはり納得しない。「子どもの足がおかしい」と言うばかり。

 困った医師は、「それではもう一度、小児科の診察を受けてください」と言いました。

 お母さんはその足で昨日診察を受けた「小児科」病室を訪ねて、「もうこんな病院、二度と来るか!」とこんなセリフを吐いて病院から出て行きました。

 忙しい中、時間を割いて、「『わからない』『異常なし』はないだろう」というお母さんの気持ちはわかります。

 しかし、その病院の医師は異常の原因を見つける能力がないのだから、仕方がない、とあきらめるしかありません。そもそも患者が望むような、何でもわかる医師などいません。病名がすぐに半分言い当てられたら名医という人もいるくらいですから……。