がんに勝つ必須ポイント 手術6回“究極サバイバー”が語る

関原健夫氏は現在71歳
関原健夫氏は現在71歳(C)日刊ゲンダイ

 がん経験者だからこそ語れることがある。2人に1人ががんになる時代。自分がそうなったら、どう付き合うべきか? 「がん六回、人生全快」(ブックマン社)の著者、関原健夫氏(71)に聞いた。

■「効果はある」と本当の意味とは

 日本対がん協会常務理事を務める関原氏は、今年71歳。39歳で5年生存率20%(当時)の大腸がんが見つかった。その後、肝臓や肺への転移を繰り返し、6回のがんの手術を経験。極め付きのがんサバイバーだ。

 そんな人生の中で関原さんが得た、がんと付き合う上で押さえておきたいことは次の通りだ。

 最も大きいのは、主治医とのコミュニケーションの重要さだという。

「正しく自分の病状を理解するには、信頼する医師ときちんと会話をしなくてはならない」

 何が問題か。自分はどうしたいのか。何を期待するのか。

 今はインターネットでさまざまな情報を簡単に入手できるが、「正しい理解」のための情報を得られているかといえば、それは違う。

 たとえば、抗がん剤の治療を受けるとする。医師が告げる「効果がある」は、患者が受け取るそれと乖離しているケースがままある。強い副作用があっても、「娘が結婚式を挙げる来年までは生きたい」という患者の希望に抗がん剤が合致していれば、受ける意味がある。いわば、利益が不利益(副作用)を上回っている場合だ。

「しかし、手術とは違い、抗がん剤は完治を望める治療ではない。『治らないのに、こんなに苦しい抗がん剤治療を受けるのではなかった』と後で思っても、時間は元に戻せません」

■抗がん剤は受けるべきか?

 がんは一人一人「展開」が違い、文献、専門書、闘病記などを読んでも100%は当てはまらない。自分の今後は主治医に確認するしかなく、自分で主治医にとことん質問する必要がある。それも、具体的にだ。

「判断に迷えばセカンドオピニオンを受けるのも良いでしょう。ただ、レベルの低いセカンドオピニオンでは意味がない。客観的に見て、高い評価を受けている医療機関、医師を選ぶべき」

 インターネットで根拠不明の情報に振り回されるのは絶対に避けたい。

 前出の通り、関原氏は最初のがんで「5年生存率20%」と告げられ、何度も転移した。

「がんとの闘いに勝ったのでは」と期待しては、裏切られ、「手術はもう嫌だ」「瞬時に死ねるものならそれも良い」と考えたこともある。しかし、決して諦めなかった。

「最後までがんと立ち向かう意志を持つ。一方で、人生は有限だと思い、その時々でやりたいことをやる」

 同じくがんを患っていた友人にアドバイスされたのは、「何を一番したいかを書き出す。10年生きられるなら。5年だとしたら。2年だとしたら。数カ月だとしたら……」。現実を認識して、今後の人生を考えるのだ。

 打つ手が少なくなると、民間療法に頼りたくもなる。それが希望になるかもしれず、完全に否定するわけではないが、関原氏は「命は取り換えがきかない。費用もかかる。残された家族のことなども冷静に考え、現状でどういう治療と向き合えるかを考えるしかない」と指摘する。

 時代の流れもあったが、関原氏は何度がんの転移を宣告されても仕事を辞めず、現役生活を貫いた。しかし近年は、がんと宣告された時点で仕事を辞めてしまう人が多い。

「現実はままならないこともありますが、可能であるなら仕事は辞めるべきではない。少なくとも、治療を受けて再発がわかるまでは」

 しっかり覚えておきたい。

▽せきはら・たけお 日本興業銀行ニューヨーク支店に勤務中、39歳で大腸がんを発症。肝・肺転移と合わせて6回の手術を受けつつ、金融の最前線で働き続けた。2007年「がん対策推進協議会」委員として「がん対策推進基本計画」作りに参画。14年まで「中医協」公益委員。

関連記事