みかんにリスク低下成分 糖尿病・脂肪肝予防は冬が好機

βークリプトキサンチンがオレンジの10倍も
βークリプトキサンチンがオレンジの10倍も(C)日刊ゲンダイ

 健康診断で「糖尿病や脂肪肝」の疑いを指摘された人に朗報だ。10~2月のシーズン中にみかんを毎日3~4個食べるだけで、糖尿病や非アルコール性の肝機能異常の発症リスクが下がるという。

 研究をまとめた国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹茶業研究部門カンキツ研究領域カンキツ流通利用・機能性ユニット長の杉浦実氏に聞いた。

「30~79歳の男女1073人(男3割、女7割)の追跡調査を10年間、続けています。温州みかんシーズンの摂取量と生活習慣病の因果関係を調べる研究で、その結果、みかんをたくさん食べる人は、糖尿病や非アルコール性の肝機能異常の発症リスクが低いことがわかったのです」

 研究はみかんの消費量日本一の静岡県三ケ日町の住民を対象に行われている。

 住民のほとんどがみかん農家で、「(商品である)みかんはまったく食べない」という人から、「毎日10個以上食べる」という人まで摂取量に幅がある。観察研究にピッタリだという。

■β―クリプトキサンチン濃度がオレンジの10倍

 みかんのどの成分が、糖尿病や非アルコール性の肝機能異常を抑えるのに役立っているのか?

「みかん好きは、血中のβ―クリプトキサンチン濃度が高いことが分かっています。これは緑黄色野菜や果物に多く含まれ、活性酸素を抑えるとされるカロテノイドのひとつです。ニンジンに多いβ─カロテン、トマトに豊富なリコペンと同じ仲間です。このβ―クリプトキサンチンは、糖尿病や脂肪肝のような状態で見られる酸化ストレスや炎症を抑えることで、肝機能の低下を抑制し、インスリン抵抗性を改善するのです」

 ちなみに、β―クリプトキサンチンの含有量は温州みかんがもっとも多く、欧米で人気のオレンジの10倍になるという。グレープフルーツやレモンなどには、ほとんど含まれていない。

「β―クリプトキサンチンは、他のカロテノイドに比べて長期間、体内に蓄積されることが分かっていて、4月の血液検査でも高濃度の人が大勢いました。研究では、血中濃度の違いで調べたところ、高い人たちは低い人たちに比べ、糖尿病の発症リスクは57%、非アルコール性の肝機能異常は49%低かったのです」

 とはいえ、みかんはその甘さゆえ、糖尿病や肥満につながるイメージがある。大丈夫なのか。

「みかん1個は普通のサイズでも約35キロカロリーくらいしかなく、8個食べてもお茶碗1杯分のご飯にしかなりません。これは、お代わりか間食のおやつを控えれば、問題ないカロリー量です」

 むろん、食べ過ぎれば問題が起こる可能性はある。高血圧、高脂血症で通院治療中の57歳の女性が、みかんを連日10~15個摂取したところ「2型糖尿病を発症した」と愛媛県内の公立病院と愛媛大医学部が報告している。しかし、これはまれなケースで、フルーツの大量摂取が問題になることはまずないという。

 ただ、今回の研究だけでは、「みかんをたくさん食べる人は糖尿病や非アルコール性の肝機能異常が少ない」ということしか分からない。そこで、杉浦氏らは新たにβ―クリプトキサンチン入りと、そうでないジュースを使う介入研究も行っている。

「すでに動物実験では、β―クリプトキサンチンが肝臓での酸化ストレスや炎症を抑えることが分かっています」

 ならば、β―クリプトキサンチンなどのカロテノイドをサプリメントなどで単独で取る方が血中濃度が高くなりそうだが、実際はそう簡単には勧められないという。

 これまで、海外ではビタミン類やβ-カロテンのサプリメントを使った大規模な臨床研究が行われてきたが、いずれも良い結果は得られていないのだ。

「サプリメントで単独に大量摂取すると、体にマイナスの影響を及ぼすこともあります。適量を他の食品成分と一緒に摂取することが重要と考えられます」

 β-クリプトキサンチンは薬ではないため、それだけを大量に摂取しても意味がなく、毎日適量のβ-クリプトキサンチンを食品から摂取する必要があるという。

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