独白 愉快な“病人”たち

北川裕二さん 1000人に1人確率で起こる薬の副作用で肺炎に

北川裕二さん
北川裕二さん(C)日刊ゲンダイ

 去年の8月末に血便が出て、最初は「痔」だと思っていたんです。でも、お尻を拭くと鮮血がつくし、血液の量も多い。しかも、それが20日間続いたので、さすがにこれはマズいと思って病院に行きました。すると、痔だけでなく大腸と小腸の入り口の炎症が見つかり、「潰瘍性大腸炎」と診断されました。

 初期症状だから薬で治すことになり、「ペンタサ」という薬を処方されて半年ほど飲み続けていました。ところが、2月すぎから体が重だるい日が続き、3月末に地方公演に行くあたりから咳き込み出し、普段は熱なんて出さないのに38度6分もある。出先で病院にかかると、インフルエンザの可能性を指摘され、東京に戻ってからかかりつけの町医者で検査を受けるとインフルエンザのA型と診断されたんです。

 その時、医師に「今、流行しているのはB型なのにおかしい」と言われました。「そんなことはどうでもいいから、とにかく薬を処方してほしい」と聞き流していたのですが、1日3回服薬しているのに1週間経っても症状が変わらない。

 薬のせいか、歌おうとすると声は良く出るけれど、息が続かない。呼吸が浅いような感じもする。それで、「肺炎かもしれないからレントゲンを撮ってほしい」と医師に相談して検査してもらうと、肺が真っ白でした。肺炎を起こしていたんです。

 慌てて総合病院に行くと、即入院。それでも高熱が3~4日続き、1週間経っても、額、両脇の下、内股にまで冷却ジェル枕を挟むほどでした。

 結局、都合1カ月の入院。僕の商売道具は喉だけですからね。このまま人生終わってしまうのかと心配でした。

 原因は、大腸炎のために飲んだ“薬の副作用”でした。1000人に1人の割合で副作用を起こすのだそうですが、僕がその1人だったんです。叔父も同じ薬を飲んでいて症状が良くなったのに、薬の相性は人によって全然違うんですね。

■今もまだ味覚障害

 退院してから、なんとか体調は回復したものの、喉の違和感と味覚障害が残り、食べ物を口に運ぶと金属みたいな感覚がありました。今もまだ味覚障害は残っていますね。

 他にも、3年前から生活習慣病の薬も飲んでいるんですが、週刊誌の「飲んではいけないクスリ」特集を見てみたら、僕が飲んでいる薬5種のうち4種が該当していました。しかも、いま感じている症状がすべて副作用の欄に書いてあったんです。「薬さえ飲めば治る」と思っていたら、そうじゃなかったんですね。

 僕は甘いものが大好きで、一時期ドリンク剤にハマっていました。そんな話をすると、ファンの皆さんからも差し入れをいただき、毎日3本飲んでいたんです。そんな糖分が多すぎる生活を改め、今度、病院へ薬を減らす相談に行く予定です。

 薬の副作用は、「病院にさえ行けば、なんとかしてくれる」という他力本願な考え方を変えるきっかけになりました。セカンドオピニオンや転院も視野に入れて受診することもアリなんだ、と。

 薬の相性は自分で伝えるしかないですし、医療の“実験台”にされてはたまったもんじゃない。自分の身は自分で守らなければいけない時代なんですね。健康でいるために、自立した患者であることが大切なんだとしみじみ思っています。

(聞き手・岩渕景子)

▽きたがわ・ゆうじ 1953年、福島県生まれ。29歳の時に「新スター誕生」でグランドチャンピオンを受賞したのを機に、農家の跡取りから演歌歌手に。現在「泣いて大阪」をリリース。キングレコード所属の男性演歌歌手ユニット「ザ・キングボーイズ」としても活動中。