橋本テツヤの快適老齢術

すべて加齢のせい? 「もうトシだから」が老化を早める

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 自分の健康の不調をすべて加齢のせいにする人がいる。物忘れをしたり視力が低下したり、性欲が衰えれば「もうトシだから仕方ない」と言い、風邪をひいて長引けば「やはりトシだなぁ」と言う。こうした年齢のせいにする「思い込み」は老いに拍車をかけることになる。だから僕は一切こうした考え方は持たない。

 テレビの「健康バラエティー番組」が増えている。タレントの健康状態を調べて、数人の医師がもっともらしく診断をするといった番組だ。血圧が高めのタレントがいれば、脳梗塞や心筋梗塞の疑いがあると脅かす。視聴者は、自分は大丈夫だろうかと心配する。しかし人間の体は一人一人違う。ひとりのタレントの血圧情報を単純化して、病気にかかるリスクを大げさに発言する医師を僕は信用しない。

 多くの患者を抱えている医師は休む間もなく忙しい。テレビのバラエティー番組に出る医師はよっぽどヒマなのだろう。社会的集団に対して固定的なイメージを持つ「ステレオタイプ」という心理学用語がある。例えば「あの人は医師だから頭が良くて優れている」「テレビに出ているから嘘はつかないだろう」というような先入観や思い込みだ。僕はそうしたことにも惑わされないようにしている。

 普段から自分の体の変化に敏感になっていれば、医師でも気付かないことがわかるようになる。講演で山形に行った際、温泉に入った。入浴はしみじみと自分の体と対面できる。子供のころは興味本位で自分のチンチンをいじくりまわしたものだが、いい大人になればその部分に触れなくなってくる。だが入浴となると別だ。自分の分身をいたわり、愛情をもって手入れをする。手足を洗うのとは違う感慨がある。ゆっくりと自然のぬるま湯につかるのは最高だ。

 ところがこの日はピリピリするような熱い湯だった。少し水を入れようとしたところ、高齢男性が入ってきた。僕が熱くて入れなかった湯に平然とつかっている。最初、彼はイキがっているのかと思ったが、そうではなかった。彼の股間のイチモツが証明してくれた。ダラリと袋のように垂れ下がっている。もう感度が鈍くなっているのだ。

 高齢になると皮膚の神経細胞の数が減るため、温度に対する感受性が低下するからだ。若い人はちょっと熱くても大騒ぎをする。僕は体を洗いながら自分の分身に話しかけた。“いつまでもぬるま湯が好きな、若々しいおまえでいてくれよ。決してダラリと袋のように下がらないでおくれ”と。

橋本テツヤ

橋本テツヤ

ジャーナリスト、コラムニスト、メンタルケア心理士、肥満予防健康管理士。著書多数。近著に「昭和ヒット曲全147曲の真実」(KADOKAWA)がある。全国各地で講演活動も精力的に展開中。