役に立つオモシロ医学論文

薬に期待は持てない…科学的根拠に基づいた風邪の知識

風邪対策に「マスク着用」は望ましい
風邪対策に「マスク着用」は望ましい/(C)日刊ゲンダイ

 寒くなってきました。本格的に冬到来という感じです。この季節、病気といえばやはり「風邪」です。ありふれた病気ですが、科学的根拠に基づいた情報は広く知られていないように思います。

 今回はカナダ内科学会誌(2014年2月18日付)に掲載された風邪に関する論文を要約してご紹介しましょう。

 風邪の主な原因はウイルスによるものですが、その多くがライノウイルスです。風邪で病院を受診すると、抗生物質を処方されることがあると思います。抗生物質は細菌に対して有効なのですが、ウイルスに対しては無効です。

 つまり、多くの風邪症状に対して、抗生物質は効果がないどころか、副作用のリスクすらあります。

 一般に年齢が上がると風邪にかかりにくくなります。年間に風邪をひく頻度は2歳未満で約6回、成人で2~3回、高齢者では1回程度と考えられます。また、睡眠不足やストレスがあると風邪をひきやすいといわれています。風邪の症状は1~3日でピークを迎えますが、時に3週間程度、持続することもあります。

 風邪予防には、「手洗い」「マスク」「水でのうがい」がある程度有効と考えられていますが、「うがい薬でのうがい」「ビタミンC」「ホメオパシー」などでは風邪予防効果は示されていません。また、風邪の鼻症状には抗ヒスタミン薬がわずかに有効かもしれませんが、市販の咳止めに大きな効果は期待できないといわれています。

 風邪対策としては、「手洗い」「うがい」「マスク着用」などの予防策に加え、睡眠不足やストレスをためないような生活習慣が望ましいといえるかもしれませんね。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。