あの話題の治療法 どうなった?

20年前の最新がん治療「温熱療法」なぜ尻すぼみになった

渋谷青葉台内科小児科クリニックの安田浩康院長とハイパーサーミア機器(提供写真)

 病院が儲からないという理由で、公的保険が利く「患者にとって安くて有効な治療法」がすたれているのをご存じだろうか? そのひとつが「温熱療法」(ハイパーサーミア)だ。がん細胞は熱に弱く、42.5度以上で死滅することが多いという特性に着目して「がん細胞の温度だけを上昇させてがんを死滅させる」治療法だ。1990年代に盛んに行われたが、いまどうなっているのか?

■米のずさんな研究論文と低い保険点数がつぶした

「温熱療法」は日本人が開発したがん治療法だ。京都大学医学部の菅原努教授が研究を開始し、その後、京都大学、東京大学、国立がんセンターなどの治験で、「腫瘍病勢制御」や「患者生存率の延長効果」などが認められた。

 がん細胞を死滅させる以外に、がん細胞内の酸素も増加させることから、がん治療で併用する放射線治療や化学療法(抗がん剤)の効果を高める作用がある。しかも、副作用は少ない。このため1990年、当時の厚生省が健康保険適用の治療法として認可承認した。

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