あの話題の治療法 どうなった?

20年前の最新がん治療「温熱療法」なぜ尻すぼみになった

渋谷青葉台内科小児科クリニックの安田浩康院長とハイパーサーミア機器(提供写真)

 日本人のがん研究者は、そのことに触れずに“米国が否定した治療法”とレッテルを貼り、なぜかこの技術を葬ってしまったという。

 もうひとつの理由は、健康保険が適用されているものの、「高額な医療機器を使用する割には診療報酬点数が低い」ことだ。温熱療法に使われる機械は、1台あたり1億~1億5000万円。がん患者の治療に平均1時間を要するが、診療報酬点数は金額に換算して5回までは1割負担の人で9000円(深部腫瘍の場合)である。これでは、病院が同機器を導入して患者の治療に当たっても、採算がとれずに赤字になってしまう。

■オランダでは標準治療

 結局、日本の名だたる大学病院やがん治療専門病院は温熱療法から撤退した。しかし、欧米では安くて効果のある治療法として高評価を得ているという。

「2000年には、オランダの研究グループが世界的権威のある医学雑誌『ランセット』に、『子宮頚がんの患者に対し、放射線単独の治療より温熱療法を加えた治療の方が生存期間が長かった』と報告しています。また、2010年に欧州温熱療法学会が発表した臨床データでも、『化学療法と温熱療法を加えた併用治療群が良好』と証明されました。ほかにも多数の臨床試験で、食道がん、非小細胞がん、乳がんなど、さまざまながんに対して温熱療法の治療効果が報告されています」

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