やがて、午前中の散歩が日課になった。体の調子がよさそうな日はゆっくり走ったり、ジョギングをしてみた。これを1年間続けたのである。
学生時代から登山を趣味にしていただけに、体力はある。体調の回復も早かった。
数年間、解約していた新聞購読も再契約した。毎朝、ひげも剃るようになり、部屋に散らかし放題だった下着を洗濯機に入れ、掃除機も手に持つようになった。
■電話が外に出る勇気をくれた
さらに、越川さんが「うつ病から解放された」と確信を得たのは、今年の春先にかかってきた一本の電話だったという。
40代で人材派遣会社を起こしたとき、真っ先に顧客になってくれた企業があった。その当時の担当者からだった。
「ご無沙汰しております。また本社に戻ってきましたので、越川さんに相談したいことがあります。来週あたりお時間取れますか?」
ドキュメント「国民病」