「大人のADHD」は睡眠時無呼吸症候群かもしれない

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 近年、クローズアップされている「大人のADHD(注意欠如・多動症)」だが、ひょっとしたら違う病気の可能性がある。睡眠時無呼吸症候群(SAS)と非常に間違えられやすいというから注意したい。

 ADHDは、発達障害の一種。「不注意」と「多動性・衝動性」の2つを主な症状とする。

 周囲の理解を得られにくく、それゆえに軋轢を生じやすい。これまでは「子供の時に症状が目立つ。大人はそれほどではない」と考えられてきたが、最近は大人になっても悩み続けている人や、むしろ大人になってからの方がより深刻な状況に陥っている人が少なくないことがわかってきた。

 ADHDは、決して本人の能力が劣る病気ではない。本人がADHDであることを理解し、同時に周囲もADHDの特性を知ることで、これまでうまくいかなかったことが百八十度良い方向に変わるケースは多い。

 ただ、そのためには専門家による診断・サポートが欠かせない。ここが難しい点だ。

「医療関係者の間でも、大人のADHDの注目度は徐々に高まってきていますが、悩んでいる人の相談に十分対応できているかというと、まだまだです」

 こう話すのは、九州・福岡で発達障害の専門クリニックを開く「パークサイドこころの発達クリニック」の原田剛志院長。ADHDは「不注意」と「多動性・衝動性」の2つ以外の症状も非常に多く見られ、患者が10人いれば10通りの悩みがあるという。

 ところが、「大人のADHDとはこういうもの」という概念がひとり歩きしていて、実はADHDではないのに「大人のADHDです」と診断されているケースが珍しくないのだ。

■「いつから」が見極めのポイント

 原田院長がその中でも特に増えていると感じているのは、「睡眠時無呼吸症候群」との誤診だという。

 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸停止を繰り返す病気。睡眠時間の長さに関係なく、質の良い睡眠を取れていないため日中の集中力が低下し、眠気が続く。多数の死者が出た交通事故の原因が睡眠時無呼吸症候群だったという報道もあり、一気に認知度が広がった。

 また、睡眠時無呼吸症候群を放置すれば、心筋梗塞などの突然死のリスクが高くなることも明らかになっている。

「この症状が、大人のADHDと非常に似通っているのです。いわば常に寝不足状態なので、うっかりミスなどを起こしやすい。これが、ADHDの『不注意』に合致します。疲労感でイライラし、ちょっとしたことでもカッとなる。これも、ADHDの『衝動性』と重なります」

 大人のADHDでは、「同じミスを繰り返す」「約束を忘れてしまう」「すぐカッとなる」「人間関係でトラブルを抱えている」などの訴えが典型的で、さらに「改めようと思ってもうまくいかない」「わざとではない」が加わるが、睡眠時無呼吸症候群でも同様の訴えがあるため、誤診につながるのだ。

「大きな違いは、『いつからか』です。子供の頃からであればADHDで、そうでなければADHD以外が考えられる。この確認はキチンと行ってほしい」

 大人のADHDの診断は、“新たな世界への第一歩”になることは間違いない。しかし、それは適切な診断でなければいけない。対策としてできるのは、経験豊富な医師に診てもらうことに尽きる。

関連記事