医者も知らない医学の新常識

脳梗塞に対する血栓回収療法の効果

脳梗塞の診察
脳梗塞の診察(C)日刊ゲンダイ

 脳梗塞は脳卒中の一つで、脳の血管に血の塊(血栓)が詰まって血液が流れなくなるため、脳の細胞が死んでしまう病気です。大きな血管が詰まってしまうと、体の半分がマヒして動かなくなるなど、深刻な後遺症が残ります。呼吸が止まって死んでしまうこともあります。

 この脳梗塞の治療に、2005年から健康保険で使われるようになったのが「rt-PA」(アルテプラーゼ)という血栓を溶かす注射薬です。

 多くの患者さんが、この治療により脳梗塞から回復されました。ただ、この治療は全身の出血が止まりにくくなるので、出血しやすいような患者さんには使えません。また、太い血管にできた血栓は溶けにくいという問題があります。

 そこで、最近、急速に進歩しているのが、血管の中に直接管を入れて、血栓を実際に取り除くという血管内治療です。網目状の管に血栓を絡めてそのまま回収するやり方や、「血栓回収療法」と呼ばれる方法がその代表です。

 2015年、国際的な臨床試験で「これまでの薬による治療より、慎重に患者さんを選んで行えばより効果がある」ことが確認され、急速に普及しています。

 先月、日本脳神経血管内治療学会は「この治療が全国で受けられるように取り組む」という学会宣言を出しました。高度の技術が必要な治療なので、安全第一で取り組んでほしいと思いますが、多くの患者さんにとって朗報だと思います。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。