マンモだけ? 次の乳がん検診は「乳腺濃度」も要チェック

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 乳がん検診で「マンモグラフィー」(乳房エックス線撮影)を受けるなら、「乳腺濃度」もチェックしなければ意味がない。

「乳がん検診でマンモグラフィー(マンモ)を受けていたのに、進行した乳がんが見つかった」

 そんな話を聞いたことがある人は少なくないのでは? そういう時、「やっぱり乳がん検診は役に立たない→検診なんて受けなくていい」と考えがちだ。しかし、その“見落とし”は「乳腺濃度」をチェックしていなかったことが原因かもしれない。

■高濃度の人は見落とされている可能性も

 乳腺は、乳汁を分泌する器官と乳汁が通る器官で構成されており、一般的に若い間は発達して高濃度。30代後半以降、個人差はあるが徐々に脂肪に変わる。発達している順から、「高濃度」「不均一高濃度」「乳腺散在」「脂肪性」に分かれる。

「乳腺が高濃度、あるいは不均一高濃度の場合、マンモを受けても乳がんが見つかりにくい。進行がんであっても『異常なし』になることもあります」

 こう指摘するのは、日本乳癌学会乳腺専門医で、濱岡ブレストクリニック院長の濱岡剛医師。日本人は高濃度、あるいは不均一高濃度の乳腺が多く、その率は「10人いれば半数以上」(濱岡医師)だという。しかも、年齢を重ねても高濃度の人も珍しくないので、マンモしか受けていなければ、本当の意味での「異常なし」ではないかもしれないのだ。

 乳がんも他のがんと同様に、早期発見・早期治療が生存率に寄与することは言うまでもない。早期に発見できれば治療の選択肢は多く、胸にどこまでメスを入れるか、胸をどこまで取るかも変わってくる。

■年1回は超音波検査を

 濱岡医師は、「乳がん検診で理想的なのは、マンモに加え、乳がんの早期発見につながるもう一つの検査法である『超音波検査』を受けること」と言う。

 諸事情で両方が無理なら乳がんの早期発見に、よりつながりやすい超音波を毎年受け、マンモを2年に1回受ける。それも無理ならせめてマンモで乳腺濃度をチェックする。そして、高濃度や不均一高濃度と言われたら超音波を受ける。そうでないと、せっかく検診を受けているのに、乳がんが発見されないままに終わる可能性があるのだ。

「『高濃度』から『脂肪性』のどれに該当するかは、乳腺専門医であればマンモの写真から一目瞭然です」

 ところが、残念ながら、マンモを受けても乳腺濃度を知らされていない人が圧倒的に多い。乳がん検診の報告書に、乳腺濃度についての項目がないからだ。

 乳がんには腫瘍(しこり)で発見されるものや、石灰化で発見されるものなどがある。そのため、乳がん検診を受けた時の報告書には、「腫瘍」「石灰化」「随伴するその他の所見(局所的非対称性陰影、構築の乱れ~乳腺のゆがみ~など)」の項目がある。しかし、これらに問題がなければ、たいていは乳腺濃度の情報はもたらされず、「異常なし」と告げられる。本気で乳がんの早期発見を考えるなら、マンモを受けた時、自分から「乳腺濃度はどうですか」を聞く。必須ポイントだ。

■理想は「両方」

「乳がん検診で一番の誤解は、『マンモを受けていれば万全』という考え方です」(濱岡医師)

 マンモは国が推奨する乳がん検診。厚労省は「40歳以上の女性は原則としてマンモを2年に1度受ける」とガイドラインで提言しており、自治体で補助が出るのもそれに該当している場合だ。しかし、マンモは石灰化に起因する乳がんの発見を得意とし、超音波は腫瘍から生じる乳がんの発見が得意。腫瘍からの乳がんが圧倒的に多いので「どちらか1つ」なら超音波だが、それだけでは石灰化からの乳がんは見落としてしまう。「両方が理想」なのはそういう事情からだ。

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