年を取ったらクスリを見直せ

「漢方は高齢者ほど副作用が起こりやすい」のナゼ

 加齢とともに「こむら返り」などの筋肉の痙攣が起こりやすくなります。激しい運動をした後や睡眠中に見られることが多く、数秒から数分の激痛が続きます。

 睡眠中に起こるこむら返りは、非常に強い痛みであることも多く、寝不足につながる可能性があります。運動後にはストレッチや軽いマッサージをして、こむら返りを予防しましょう。

 それでも起こる場合には、温浴、蒸しタオルなどで温めると症状改善に役立ちます。これらの対応で改善されない場合には、漢方薬の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が使用されます。筋肉の痙攣や痛みを和らげる効果があります。

 芍薬甘草湯は多くの人が使用していて効果も高い薬ですが、「偽アルドステロン症」という副作用に注意しましょう。高血圧、むくみ、カリウム喪失や、程度が重い場合には筋肉が壊れたり、脈が乱れたりする症状が表れます。

 服用後、数週間あるいは数年後に症状が出る場合もあります。副作用が起こった人の80%が50~80代なので、高齢であるほど副作用が起こりやすいといわれます。

 実際、ある70代女性が1カ月間ほど芍薬甘草湯を服用したところ、むくみと体重増加が表れました。病院でレントゲン検査を受けると心拡大が確認されたケースがあります。すぐに芍薬甘草湯を中止して適切な処置がされたため、10日後にはむくみも心拡大も改善しましたが、仮に放置していたらもっと深刻な状態に見舞われた可能性があります。

 偽アルドステロン症は、芍薬甘草湯以外にも「甘草」という生薬が含まれる漢方薬で起こるといわれます。

 漢方薬を服用していて、手足のだるさ、しびれ、筋肉痛などが表れたり、症状がだんだん強くなる場合には、すぐに医師や薬剤師に相談してください。

中尾隆明

中尾隆明

1985年、愛媛県生まれ。愛媛県立南宇和高等学校を経て岡山大学薬学部を卒業。2008年からこやま薬局(岡山県)で管理薬剤師を務め、現在は企画運営部主任として各店舗のマネジメントを行っている。8月に著書「看護の現場ですぐに役立つ くすりの基本」(秀和システム)を発売。