天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

往年のスターホースが教える「心房細胞」の怖さ

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 中央競馬の一年を締めくくる師走の大一番「有馬記念」が迫ってきました。有馬記念といえば、思い出すのが「芦毛の怪物」と呼ばれ、空前の競馬ブームを巻き起こしたオグリキャップです。もう限界だとささやかれながら、引退レースとして臨んだ90年の有馬記念で、武豊騎手を背に劇的な勝利を飾った名馬です。

 オグリキャップは87年に地方の笠松競馬でデビューし、8連勝を含む12戦10勝の成績を引っさげて4歳(現3歳)1月に中央競馬に移籍しました。移籍後は、クラシック登録がないまま重賞6連勝を達成。古馬を相手にGⅠレースでも名勝負を繰り広げ、一躍トップホースに上り詰めました。

 そんなオグリキャップが、6歳(現5歳)になって大敗を続けるようになります。疲労による体調不良や脚部不安など、さまざまな原因を指摘されましたが、私は「心房細動」が関係していたのではないかと考えています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。