天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

往年のスターホースが教える「心房細胞」の怖さ

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 オグリキャップの場合、馬体重が増えて「脈拍が速くなっていた」と調教師さんが証言しています。このころ、心房細動を起こしていた可能性があるのです。

 結局、オグリキャップはカイバや調教などによって馬体重を絞り込んだことで脈拍の速さが勝てていたころに戻り、引退レースの有馬記念を勝利することができたそうです。おそらく、馬体重を減らしたことで心房細動が改善したのでしょう。

 人間も肥満によって体重が増えると、心房細動を起こしやすくなります。肥満になると、高血圧や高血糖などを合併する可能性が高くなり、心臓に負荷がかかります。心臓は負荷がかかると肥大していき、心臓が大きくなると心房細動を起こし、一部の患者さんでは致命的な脳梗塞に至ることもあるのです。

 近年、中高年になって心房細動を発症する人は、肥満、高血圧、高血糖を基本疾患として抱えているケースが圧倒的に多い傾向があります。かつては、弁膜症などの心臓疾患によって心房細動を起こしていた人が多かったのですが、いまは生活習慣病が引き金になっているのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。