Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

改正がん対策基本法で考えた「がん治療と仕事」両立のカギ

治療の選択は焦らなくていい(C)日刊ゲンダイ

 放射線のメリットは、受診しやすさだけではなく、大事なのは治療効果です。頭頚部や食道、肺、乳腺、前立腺、子宮頚部など多くのがんで、手術と同等の効果が得られます。欧米では6~7割が放射線で治療されるのはそのためですが、日本はわずか3割。放射線を選ぶ余地は十分あるでしょう。

 放射線の夜間医療機関が全国にあるわけではないとはいえ、こういう選択肢があることは頭に入れておいてください。そうでないと、がんの治療と仕事、ひいては生活とのマッチングが難しくなります。

「息を引き取る直前まで『仕事に行こう』と申しておりました」とは、昨年4月に亡くなった俳優・愛川欽也さん(享年80)を看取った妻・うつみ宮土理さん(73)の言葉です。病状に応じて治療法をうまく選択すれば、亡くなる直前まで元気に仕事ができますから。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。