命を落とすケースも 「ランナー頭痛」を侮ってはいけない

ふらつきがあれば救急車を
ふらつきがあれば救急車を(C)日刊ゲンダイ

 マラソンやジョギングを愛好しているランナーには、頭痛を訴える人が多いという。「よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック」の奥井識仁院長に話を聞いた。

 骨盤外科医の奥井院長は、自身もランナーであり、子供の頃からの頭痛持ちだ。そのため、「走っている途中、あるいは走った後に頭痛が起こる。原因や対処法を教えて欲しい」といった相談をランナーからしばしば受けるという。

 頭痛の起こり方によっては、MRIなどの検査がすぐに必要な「命を落とすリスクが高い頭痛」もあるから要注意だ。具体的に紹介しよう。

■危険なケース

 頭痛と同時にふらつきや吐き気がある場合、まず考えられるのは低血糖。糖尿病でインスリン治療を受けている人に起こりやすく、対処が遅ければ命にかかわる。また、糖尿病でなくてもランナーには誰でも可能性がある。

「ふらつきを伴う頭痛があったら、糖分を摂取しましょう。治まらなければ救急車を呼んだ方がいい。対策としては、特に長時間走るフルマラソンでは、走りながら糖分を適切に摂取すること」

 次に脱水が挙げられる。血液の量が低下し、脳への血流が減り、頭痛やふらつきを起こす。

「走っている時はスポーツドリンクなどを度々飲んでください。加えて、日頃から自分に合った水分量を知っておくべきです」

 なぜなら、水分補給が過剰なのもNGだからだ。汗でナトリウムが失われているのに、水分補給で体内のナトリウム濃度がより低くなり、「低ナトリウム血症」を引き起こしかねない。

「低ナトリウム血症も頭痛の原因。軽度では全身倦怠感、中程度では頭痛や吐き気が起こります。高度になるとけいれんを起こし、意識を失う重篤な状態に至ることもあるのです」

■工夫で改善できるケース

 走っている途中や走り終えた後に頭痛をしばしば起こす人に、「コーヒーを1日何杯も飲んでいない?」、あるいは「頭痛薬を頻用していない?」と聞くと、たいていはどちらかにうなずくという。
「ランナーに見られる良性の頭痛のうち、かなりの割合を占めていると考えています」

 コーヒーにはカフェインが含まれていて、脳の血管に作用して頭痛を感じにくくする。カフェインの作用が切れてくると再び頭痛を感じるが、コーヒーを飲むと治まる。これを繰り返していると、自分の体内の“天然の痛み止め成分”が出にくくなる。頭痛薬も同様で、頻繁に使っていると、天然の痛み止めの分泌が抑制される。

「走っている間のカフェイン切れ、頭痛薬切れによる頭痛です。2週間ほどコーヒーや頭痛薬を断つのが対処法になります」

 ちなみに、米国などでは「カフェインを積極的に取るとタイムが良くなる」と信じている人がいる。奥井院長によれば、「それがかえって頭痛の原因になっている」という。

 良性の頭痛では、肩こりが関係しているものもある。肩こりは後頭部から側頭部の血流が悪いことで生じる。

 走るフォームが良くないと、後頭部から側頭部のもともと悪い血流が、より悪くなり、脳の血管がけいれんして頭痛につながる。

「肩の力を抜き、正しいフォームで走ると頭痛が改善されます。さらには、肩こりに効果がある漢方薬『釣藤散』をお勧めします。日頃の肩こりから治していきましょう」

 奥井院長も、頭痛と良い関係を築きながら、ランナー生活を満喫している。

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