数字が語る医療の真実

乳がん検診は年齢が高いほど効果がある

 これまで、長々と“理屈”を中心に紹介してきましたが、今回からは、がん検診にかかわる具体的な“数字”を紹介していきます。まずは、がん死亡の減少がランダム化比較試験のメタ分析で示されているがん検診のひとつ「乳がん」です。

 メタ分析とは、複数の研究を統合して結果を示した論文で、一つの研究でこういう結果が出たというものとは異なり、発表された関連するすべての研究をまとめてみてどうかを示しています。まず参考にすべき論文です。

 乳がんに関するメタ分析は、9つのランダム化比較試験をまとめて、「マンモグラフィーによる乳がん検診の効果」を「乳がん死亡が減るかどうか」に焦点を当て、平均13年間の追跡期間で検討しています。

 39歳から69歳の女性が対象ですが、がん検診を受けないグループで100人の乳がん死亡がある場合、「マンモグラフィーによるがん検診グループで81人にまで減る」という結果です。およそ、20%乳がん死亡が少なくなるということです。

 年齢別の結果を見ていくと、50歳未満では100人の乳がん死亡を84人にまで減らす、50歳以上では100人から77人まで減らすという結果です。若い人では、さらに効果が小さくなることが示されています。といっても、若い人でも乳がん死亡は減る方向にあるので、この数字だけを見れば39歳を越えたらがん検診を受けたほうが良いということになるでしょう。39歳未満では研究結果がありませんが、もっと効果が小さくなって、乳がん死亡を減らさないという結果になっているかもしれません。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。