有名病院 この診療科のイチ押し治療

【前立腺肥大症手術】湘南鎌倉総合病院・泌尿器科(神奈川県鎌倉市)

湘南鎌倉総合病院・泌尿器科の三浦一郎部長
湘南鎌倉総合病院・泌尿器科の三浦一郎部長(提供写真)

 同科の診療のモットーは「インフォームドコンセント」「低侵襲の治療」「がんの早期発見」の3点。低侵襲の検査・治療では、これまでも痛みの少ない軟性膀胱鏡(内視鏡検査)や腹腔鏡手術などをいち早く取り入れてきた。そして、今月から実施を始めたのが「前立腺肥大症に対する最新式レーザー手術(PVP)」だ。同科の三浦一郎部長(顔写真)が言う。

「『尿の出が悪い』『頻尿』『残尿感』などの症状が出る前立腺肥大症の治療の第1選択肢は内服薬です。そして、薬では対応できなければ、低侵襲手術として尿道に内視鏡を挿入して肥大した前立腺を高周波メスで切除する『TUR―P』が行われていました。しかし、低侵襲手術といってもすべての患者さんが受けられるわけではありませんでした」

 従来のTUR―Pの課題は、手術中の出血量が多いこと、術後に尿道カテーテルを留置する期間が長い(3~5日)こと、低ナトリウム血症(水中毒)を起こすリスクがあるなど。それに、前立腺の手術は出血しやすいという特性から、抗凝固薬や抗血小板薬を服用している高齢者には手術ができなかった。

 そのため、症状が悪化して尿がまったく出なくなる「急性尿閉」を繰り返すような人では、尿道にカテーテルという管を留置し、定期的な交換が必要になる。痛みも伴うため、生活の質が著しく低下する。

「PVPの大きな利点は、術中の出血量が非常に少ないことです。ですから、抗凝固薬などを服用している患者さんでも安全に手術をすることができます。術後の尿道カテーテルも1日で取れて、低ナトリウム血症などの合併症のリスクも少ない。TUR―Pの課題が、ほとんどクリアできるようになりました」

 PVPはTUR―Pと同じ内視鏡手術になる。しかし、出血量が極端に少ないのは、肥大した組織を“切る”のではなく、特殊な緑色レーザー光を組織に当てて瞬時に“蒸散”させるからだ。手術は下半身(腰椎)麻酔で、所要時間は1~2時間。入院期間も従来は約10日だったのが、約5日で退院できる。また、術後に勃起障害や失禁が起こることはほとんどない。

 PVPは2011年に保険適用になっており、治療費は入院料などすべてを含め3割負担でおおよそ12万円だ(高額療養費制度が利用できる)。

「PVPの難点を挙げるとするなら、蒸散するので組織を採取できないことです。そのため、PSA検査(腫瘍マーカー)で少しでもがんの疑いがあれば、必ず生検でがんがないことを確認してから手術をします」

 PVPのレーザー機器の国内の導入台数は約80台(2016年1月時点)。同科は、神奈川県内の医療施設で2番目の導入になるという。

「これまで尿閉になっても手術を受けられなくて、薬物療法を続けてこられた患者さんはたくさんいます。PVPはそのような患者さんにも手術の可能性を広げることができます。急性尿閉は、総合感冒薬(かぜ薬)の使用や飲酒が原因のことも多いです。PVPで手術をすれば、薬物療法をやめられるだけでなく、お酒も安心して飲むことができます」

データ
 徳洲会グループ(73施設)の基幹病院。
◆スタッフ数=常勤医師2人、非常勤医師2人
◆年間初診患者数(2015年)=385人(うち前立腺肥大症の患者約3割)
◆前立腺肥大症の年間手術件数(同)=25件