以前もお伝えしたように、全米でヘロインとオピオイド系麻薬の過剰摂取による死亡事故は増え続け、2010~14年の5年間で3倍に増加。1日平均79人もの人が亡くなっています。
その多くは、最初、手術後などの痛み止めとして医師に処方された鎮痛剤の依存症となり、処方が受けられなくなった後、より安価で強いヘロインに走るといわれています。そして彼らを次に待っているのが合成オピオイドのフェンタニルとカフェンタニル(Carfentanil)です。
フェンタニルはモルヒネの50倍から100倍もの強さを持つ鎮痛剤で、ヘロインやオピオイドに耐性ができた人が次に手を出していると考えられている麻薬です。
さらに恐ろしいのがカフェンタニルで、ヘロインの5000倍から1万倍もの強さを持っているといわれています。通常は象などの大型動物のトランキライザーとして使用され、人間にとっては素手で触るだけで危険な毒物です。
どちらもヘロインに耐性がある人でさえ、ほんの微量で過剰摂取を起こすほどの強さで、昨今の死亡事故の原因の多くを占めています。アメリカでは製剤されていないため、メキシコのドラッグ・カルテルなどにより違法に持ち込まれています。
最も危険なのは、ヘロインとして売られているものに、値段が安いカフェンタニルが混入しているケースです。
16年オハイオ州でわずか6日間に174件ものヘロイン過剰摂取事故が発生しましたが、これがヘロインにカフェンタニルが混入しているのを知らずに摂取したのが原因だったとみられています。
このようなカフェンタニルが原因の過剰摂取事故は全米、さらにカナダにも急速に広がる気配を見せ始めていますが、人種や貧富の差なども超えてあらゆる人を巻き込んだ非常に深刻な社会問題となっています。
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