Xmas贈答に大人気 「VR」ゲームで目に異常は出ないのか

将来、立体感や空間認識能力が失われる?
将来、立体感や空間認識能力が失われる?(C)日刊ゲンダイ

 今年のクリスマスプレゼントは、赤外線コントロール潜水艦やカメラ付きドローンなどと並び、最先端の「仮想現実(VR)」ゲームが人気だ。ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)を装着すれば三百六十度囲まれた臨場感あふれる世界を味わえる。時間を忘れて夢中になるのも無理はないが、気になるのが目への負担だ。左右の目がそれぞれ、わずかにずれた画像を近距離から見ることで脳内に立体的な仮想世界を描くVR。見続けることに問題はないのか?

「6歳未満は視覚の発達期であるため使用しないこと。13歳未満くらいまでは長時間の使用は避けるべきで、30分遊んだらしばらく目を休ませなければ目の成長に影響を与える可能性があります」

 こう言うのは、大阪大学大学院医学系研究科・感覚機能形成学教室の不二門尚教授だ。不二門教授は同大学付属病院で小児眼科・神経眼科を専門とし、3D普及のための業界団体で3D画像利用についての規制づくりに携わっている。

「人間の目は、左右の目それぞれの映像を脳内の立体視細胞で合わせることにより、立体の形を把握します。ところが、VRや3Dの物理的な映像は目の前のスクリーンに表示されていて、目の焦点はそこに合っている。なのに脳はそれよりももっと遠く、あるいは近くに映像があると認識します。そのため実際の映像と立体視細胞で把握する認識にズレが起きて、映像を見続けると目が疲れます」

 問題は、人間の立体視細胞は成長と共に形成されるものであり、完了するのは6歳ごろだということ。つまり、立体視細胞が成長しきっていない子供たちがVRや3D画像を見続けると、立体視細胞の成長に影響が出て、将来、正常な立体視ができなくなる恐れがある。

「また、VRは通常、大人の平均的な瞳孔間距離を基準にして作られています。瞳孔間距離が狭い子供が使い続けると、正しい距離感が得られず、将来、空間認知能力に影響が出るかもしれません」

 歴史の浅いゲーム機器にはこうした懸念が拭い切れないため、ゲームメーカーはVR機器、3D機器に対象年齢を設け、12歳以上としている。

 気になるのは3D映画を見た子供の中に急性斜視になり、それが治らないケースがあることだ。

「国内では1件だけですが、4歳の子供が3D映画を見た後に斜視となって3カ月後に手術して治ったという事例がありました。大人なら近くを見続けて寄り目(輻輳)になったとしても、少し休めば元に戻りますが、子供は戻らなくなる可能性があります」(不二門教授)

■「気になるのはブルーライト」

 では、12歳以上なら問題はないのだろうか? 眼科専門医で清澤眼科医院の清澤源弘院長が言う。

「大人でもカーレースなど動きが激しいVRだとVR酔いが強く出る可能性があります。人間は内耳にある三半規管と目で見る視覚情報などを組み合わせることで平衡感覚を保っています。これまでの3D画像は視覚情報だけで平衡感覚を保ってきましたが、首を動かせるぶんだけVRは酔いが少ないかもしれません。しかし、映像の動きが激しいぶん、眼精疲労はもちろん、VR酔いは強く出るかもしれません」

 VRのHMDは内部に凹レンズが装着されていることにより、実際より遠いところを見ている感覚があるため至近距離を見続ける弊害は少ないかもしれない。

「ただし、通常の印刷物のようにコントラストがハッキリしたものでなく、液晶画面を構成する画素はぼんやりしたものなので、近視になりやすい」(清澤院長)

 以前、テレビアニメを見ていて「光感受性発作」を起こした子供が多発したことがある。HMDで視界を遮った状態で光をまともに受けることに問題はないのか?

「テレビ、ゲーム業界ともに光感受性発作へは配慮されているでしょうが、気になるのはブルーライトです。波長の短い強いパワーを持つ可視光線で、パソコンやスマホ、ゲーム機器、LEDライトなどに使われています。光が散乱しやすく、目の水晶体がピントを合わせるときに負担がかかるともいわれています。しかも、ブルーライトの光は網膜まで到達し、活性酸素を発生させて目の奥の組織を酸化する。メラトニンの分泌を抑えるので睡眠障害にもつながりやすいことがわかっています」

 いずれにせよ、VRはほどほどが肝要だ。

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