天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

お酒が体に引き起こす作用が心臓の負担を増大させる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 カナダ医師会雑誌に掲載された論文では、心臓病や糖尿病を持っている人のうち、アルコール摂取が少量の人に比べると、中等量や大量の人は心房細動の発症頻度が増加すると報告されています。

 アルコールそのものは、大量に摂取し続けなければ心臓にそれほど悪影響は与えません。アルコールを摂取したことによって、心臓の動きを活発にさせたり、血圧を上昇させたり、脱水を引き起こしたりする作用が心臓に大きな負担をかけるといえるでしょう。

 心臓の手術をした患者さんには、退院する際に必ず「お酒を飲みすぎないように」という指導をします。お酒を飲む場合、日本酒や焼酎は最大で1合(180ミリリットル)、ビールなら中瓶1本(500ミリリットル)、ワインはグラス1杯(120ミリリットル)、ウイスキーはダブルで60ミリリットルまでが目安となる適量です。お酒が好きな人にとっては厳しく思えるかもしれませんが、心臓の状態を急激に悪化させないためには、制限が必要なのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。