当事者たちが明かす「医療のウラ側」

大手病院に労働基準監督署の調査

都内の50代開業医

 電通の女子社員が過酷な労働環境から自殺に追い込まれた事件の影響でしょうか。今春、都心の大手病院に労働基準監督署の調査が入ったことが病院関係者の間で改めて話題になっています。

 労基署の調査といわれてもピンとこないかもしれませんが、労働基準監督官は「労働基準法」「労働安全衛生法」「最低賃金法」などに照らし、法律が順守されていなければ「是正勧告書」を交付します。

 監督官は労基法第101条により、関係者への聴取や書類の検査などの権限を与えられています。しかも、犯罪捜査ではないので捜査令状も、立ち入るための事前通告も必要ありません。

 にもかかわらず、監督官は特別司法警察職員としての権限があり、逮捕権も持っています。これは憲法第25条が掲げた「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を実現するために必要と考えられているからです。

 それだけ強力な権限を持った監督官が検査に入ったなら、病院側に思い当たることがなくてもビクつくのは当然です。

 さて、労基署の立ち入り検査で必ずチェックされるのが36(サブロク)協定といわれるものです。労基法には1日8時間、1週間40時間が労働時間の限度と定められており、これに違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。しかし、事業者代表と労働者の過半数を代表する者が合意(36協定)していれば、法定時間外、法定休日労働であっても罰則を免れます。長時間勤務が常態化している大病院では、この点が常々、問題になるのです。

 大手の病院の立ち入り検査の詳細は、他の病院の参考になります。そのため、病院関係者は興味津々というわけです。