患者負担も軽減 大腸がん検査は“内視鏡よりCT先”の時代

三井タワークリニックの斎藤達也院長(左)
三井タワークリニックの斎藤達也院長(左)/三井タワークリニック提供

「大腸がんは気になるが、事前に大量の下剤を飲むのが嫌」「お尻に内視鏡を突っ込まれたまま、検査を受けるなんて屈辱」。そんな理由から大腸内視鏡を敬遠する中高年は少なくない。しかし、大腸がんの死亡者数は男性3位、女性1位と高率。便潜血検査で陽性を告げられた人は詳細な検査を避けては通れない。ならば、負担の少ないCT検査を先に受けてはどうか? 100例以上の大腸がんCT検査を手掛ける「三井タワークリニック」(東京・日本橋)の斎藤達也院長に聞いた。

「大腸CT検査は内視鏡を使わない新しい大腸がん検査です。大腸を炭酸ガスによって膨らませて新型のマルチスライスCTを用いて撮影することで、大腸の3次元画像を得ることができます。別名、仮想(バーチャル)大腸内視鏡検査と呼ばれています」

 斎藤院長によると、CT検査は内視鏡検査に比べて、患者への負担がはるかに少ないという。

「検査当日は細いチューブを肛門から数センチ入れて炭酸ガスを注入し、大腸を膨らませます。その後、うつぶせとあおむけでCT撮影。チューブを抜いて終了です。検査室に入ってからおよそ10~15分程度で終了です」

 大腸内視鏡検査の最大の難点は検査前に2リットル近い液体の下剤や腸管洗浄剤を数時間かけて飲み、胃腸に残っている内容物を洗い流す必要があること。つらくて途中で吐く人もいて、下剤を飲めずに検査自体をあきらめてしまう人も少なくない。

「CT検査でも下剤は使いますが、その量はわずか。検査前日にレトルトパックの検査食を食べ、少量の造影剤と下剤を飲んでいただきますが、検査当日は下剤や造影剤は必要ありません」

■高齢者・障害者でもラクに受けられる

 しかも、大腸内視鏡検査に欠かせない鎮痛剤や鎮静剤の注射は必要ない。お尻に炭酸ガス用のチューブを入れるが、大腸内視鏡検査のように大腸に穴が開くような事故もまずない。

「腸が長くて内視鏡検査が向かない人、下剤や腸管洗浄剤を大量に服用できない高齢者や女性、知的障害者の方でもCT検査なら問題なく受けられます。なにより、内視鏡では観察しづらい大腸のひだや曲がり角の裏などの観察に優れていますし、腹部のCT画像を撮るので、肝臓がん、胆嚢がんなど、その他の臓器の病変も分かります」

 ちなみに、三井タワークリニックでは、これまでに大腸CTを100例以上行ってきたが、4例の大腸がんを見つけ、皆手術を終えたという。

「むろん、大腸CT検査には内視鏡より劣る点もあります。がんの疑いがあるときに、すぐに組織を採取したり、ポリープの切除ができず、改めて大腸内視鏡が必要になる点です。通常のCTより線量が少ないとはいえ、医療被曝も受ける。5ミリ以下のポリープや平らな病変を見つける能力は、内視鏡に比べてやや劣ります」

 とはいえ、被曝量は多くないし、大腸ポリープの8割は腺腫で、5ミリ以下の大腸ポリープはがんになる確率は極めて低い。大腸CT後に内視鏡検査が必要になるケースも1割に満たない。逆にいえば、多くの人はツラい内視鏡検査を受けずに済むのだ。

「造影剤でアレルギー症状が出る人、腎臓が弱っていて造影剤などを代謝できない人にCT検査はムリですが、そうでなければ先にCT検査を行い、それでも大腸がんの疑いが残れば、内視鏡検査を受けるのが良いでしょう」

 大腸がんCT検査は血便・便通異常などの自覚症状がある時は保険診療が適用され、約8000円程度(別途検査食代3000円)が必要となる。一方、健康な人が受ける健康診断や人間ドックでは、自由診療扱い。三井タワークリニックでは単独で4万円、人間ドックとの同時予約で3万5000円(税別、別途検査食代3000円が必要)だという。

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