数字が語る医療の真実

マンモグラフィーによる乳がん死亡は0.07ポイント減るに過ぎない

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 前回、マンモグラフィーによる乳がん検診で、乳がん死亡が100から81にまで減ると書きました。100から81を引いて19%減るというわけです。しかし、この「19%減る」というのは効果の一部しか表現していません。

 元論文を見ると、検診を受けるグループと受けないグループのそれぞれの13年間の乳がん死亡は、検診を受けるグループで0.36%、受けないグループで0・43%となっています。この2つの差を取ってみると、0.43マイナス0.36で、検診によって乳がん死亡は「0.07ポイント減る」というふうにも言えます。先の「19%減る」とは、ずいぶん違った感じになるでしょう。しかし、この0.07ポイント減るというのもひとつの見方として間違ってはいません。視点が違うだけのことです。

 差にすると効果があまりに小さいのと同様、13年くらいでは、検診を受ける受けないにかかわらず、99.5%以上の人は乳がんで死なないということもわかります。乳がんは進行が遅いので、13年くらいではなかなか死亡する人が出てこないのです。

 では、20年、30年と研究を継続すれば、もっとはっきりと差が出るかというと、そうとも言えません。検診を最初に受けたときに60歳の人は20年後には80歳で、乳がん以外の病気での死亡の危険も増加しており、乳がん検診だけの効果検討を行うのはますます困難になってしまうのです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。