有名病院 この診療科のイチ押し治療

【アトピー性皮膚炎】東京逓信病院・皮膚科(東京都千代田区)

東京逓信病院・皮膚科の江藤隆史部長
東京逓信病院・皮膚科の江藤隆史部長(C)日刊ゲンダイ
塗り薬だけで7~8割が寛解

 乾癬とアトピー性皮膚炎の治療に定評がある同科には、全国から患者が訪れる。特に患者数の多いアトピー性皮膚炎は、常時1000人近くの患者が通院している。その中には、いくつもの皮膚科を受診してもよくならず、ドクターショッピングを繰り返した末に同科にたどりつく患者も少なくない。他院の治療と何が違うのか。同科の江藤隆史部長が言う。

「何も特別な治療をしているわけではありません。診療ガイドラインに沿った当たり前の治療をきちんとやっているだけです。ただ、アトピー性皮膚炎は外用薬での治療になるので、患者さんの薬の塗り方が悪いとよくなりません。その正しい薬の塗り方をねちっこく指導しています」

 治療は、体部と四肢の患部に塗るステロイド外用薬、首から上の患部に塗るタクロリムス外用薬(免疫抑制剤)、全身のスキンケアとして塗る保湿外用薬の3剤を基本とし、かゆみが強ければ抗ヒスタミン薬(内服)を補助的に使う。

■「ステロイドは副作用が怖い」は誤解

 しかし、症状がよくならない患者の8割はステロイド外用薬の塗り方に問題があるという。

「30年前にあった『ステロイドは副作用が怖い』という誤解によるバッシングがいまだに尾を引いているのです。そのためステロイドを適正量使わない『腰引け』になり、治療が不十分なまま貴重な人生を台無しにしてしまっているのです」

 ステロイド外用薬の長期使用による副作用と誤解されているのは、「皮膚が黒くなる(色素沈着)」「厚ぼったくなる」など。しかし、この症状はステロイドを怖がって十分な量を塗らないために炎症が完全に治まらず、くすぶった状態で引き起こされる症状だという。

 1回に塗る外用薬の適正量の目安は「フィンガー・チップ・ユニット(FTU)」と呼ばれ、診療ガイドラインでも推奨されている。

「FTUの量は、外用薬を指先に第1関節まで押し出した量です。これを手のひら2枚分の面積に塗ることがとても重要になります。この塗り方を守れば、どんな患者さんでも十分な量が塗れるので、皮膚が黒く厚くなってしまうようなことはまず起こりません」

■人気の秘密は正しい薬の塗り方の徹底指導

 アトピー性皮膚炎の治療ではFTUの指導が必ずされているはずというが、それでも不十分。同科では通院(月1回程度)の際に、患者が使用した外用薬の空のチューブを回収して、きちんと使い切っているかどうか確認する徹底ぶりだ。

 これらの外用薬治療で患者の7~8割は症状が寛解(良い状態が保たれる)するという。効果が不十分であれば、光線療法や免疫抑制剤の内服を併用する。

「アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイドに対する誤解の払拭やFTUの理論が最も重要になります。それを勉強してもらうために週1回『アトピー教室』を開いているので、必要な患者さんには参加を勧めています」

 また同科は、都内有数の16床の皮膚科ベッド数をもつ。正しい治療による効果が実感できる「教育入院」(1週間、3割負担で約8万円)も行っている。

データ
 日本郵政グループの企業立病院。
◆スタッフ数=常勤医師7人、非常勤医師3人
◆年間初診患者数(2015年)=約3000人(うちアトピー性皮膚炎患者数=約750人)
◆アトピー性皮膚炎の教育入院数(同)=約100人