糖尿病予備群は要注意…正月の血糖値コントロール術

おせち料理の味付けは濃く、糖質や塩分の取り過ぎも
おせち料理の味付けは濃く、糖質や塩分の取り過ぎも(C)日刊ゲンダイ

 正月は自宅でテレビを見ながら寝て過ごす。そんな人も多いのではないか。しかし、年末年始は血糖値が上がりやすい季節。糖尿病やその予備群の人は用心しないと本格的な糖尿病に苦しめられることになりかねない。女子栄養大学・栄養クリニックの蒲池桂子教授に正月の血糖値コントロール術を聞いた。

「冬場は、1年間で血糖値が高くなる時季です。糖尿病の診断基準のひとつで、過去1~2カ月の血糖値の平均を示すHbA1cは、特に2、3月が高い。それだけ年末年始の血糖値コントロールが難しいのです」

 年末年始に血糖値が乱れる理由のひとつは寒さ。その刺激がアドレナリンを分泌させ、血圧とともに血糖値をアップさせる。ふたつ目は睡眠不足。夜通し話したりテレビを見ることで、食欲を高めるホルモンであるグレリンの増加と、それを抑えるレプチンが低下。その結果、食べ過ぎて血糖値が上がり、糖尿病の発症リスクがアップすることが国内外の研究で分かっている。

 しかし、この時季に問題となるのは暴飲暴食だろう。運動量が減り、ただでさえ基礎代謝が落ちているのに、食べる量が増えれば血糖値が上がるのは当然だ。

「特にお正月は血糖値を上げる食べ物が多いので注意が必要です。例えば切り餅は1個(70グラム)で軽くご飯茶碗と同じカロリーがあり(約160キロカロリー)、吸収が速い。焼いた餅を砂糖醤油でそのまま食べるのではなく、お雑煮のように野菜と一緒に食べたり、きなこ餅にしてゆっくり吸収するような工夫が必要です」

■カレーはご飯を雑穀米に

 おせち料理には味付けを濃くするために砂糖やみりんなどの糖質が使われているだけでなく、うま味を引き立てる醤油などの塩分も隠し味として使われている。昆布巻きはその代表で、食べ過ぎて塩分の取り過ぎになることも珍しくない。

「血糖値を上げない食べ方の基本は、最初に食物繊維の多い野菜を取り、それから肉などのタンパク質、最後に炭水化物という懐石料理的な食べ方が良いとされています。その伝でいけば、おせち料理を食べるときは、最初に紅白なますや野菜、お雑煮のおつゆなどでお腹を満たし、次にエビや肉巻き、最後に昆布巻き、黒豆煮、雑煮のお餅を食べるのが良いでしょう」

 最近は、おせち料理は元日だけで、2日からは通常の食事という人も増えている。人気のメニューは、大勢で食べられるカレーだ。

「アンケートでも正月中に食べる料理で多いのはカレーです。ただ、カレーはつい食べ過ぎて血糖値を上げやすい。野菜を多く入れたり、ご飯を雑穀米にするなどして穏やかに吸収させたり、少なめによそうなどの工夫が必要です。サラダを先に食べることも大切です」

 もちろん、一気食いはNG。ゆっくり時間をかけて食べることが大切だ。カレー以外に鍋料理も人気だが、すき焼きは割り下が甘いので、水炊きなどの方が好ましい。

「果物はミカンがいいでしょう。抗酸化作用を持つカロテノイドの一種であるβ―クリプトキサンチンが含まれており、血流改善効果が認められています」

■つまみは切り干し大根

 ミカンの袋やスジにもコレステロール値や血圧の上昇、中性脂肪を抑える働きがある。袋ごと食べるといいという。

「Sサイズのミカンなら小さいので、つい房全体を袋ごと食べることになるのでおススメです」

 お正月にはお酒は欠かせない。焼酎やウイスキーなどの蒸留酒は糖質ゼロで良いとされるが、問題はおつまみ。ここでも糖質のことをアレコレ考えていたら、せっかくのお正月気分が台無しだ。

「ならば、切り干し大根をつまみ代わりにしてはどうでしょう。食物繊維が豊富なので、ほかにおつまみを食べても腸の吸収を穏やかにするので、血糖値コントロールに役立ちます」

 ちなみに、干し柿はアルコールの分解やそれによってできたアセトアルデヒドを体外に排出する働きがある。お酒と一緒に取ると二日酔いになりにくい。なお、正月だからといって家に引きこもる必要はない。初詣や七福神巡り、親戚などの挨拶回り、初買いなどで外に出て、体を動かすことも忘れてはいけない。

関連記事