独白 愉快な“病人”たち

夏目亜季さん 「お母さんを呼んで」でよほど悪いと察した

夏目亜季さん
夏目亜季さん(C)日刊ゲンダイ
アイドル26歳<全身性エリテマトーデス(SLE)・子宮頚がん>

 今年は3月から5月上旬まで、持病の全身性エリテマトーデスの症状のひとつ、自己免疫性溶血性貧血が悪化して入院していました。退院しても「プレドニン」という薬の副作用で、この夏は今まで以上にムーンフェース(顔のむくみ)がひどくて外出できなかったんですけど、やっと薬が減ってきて、むくみが落ち着いてきたところです。

 思えばここ数年、入院ばかりしていて、ホント嫌になっちゃう(笑い)。その最たるものが子宮頚がんでした。

 もともと、高校1年生で鉄欠乏性貧血と診断され、造血剤を常用していました。体育の授業はいつも見学組。そして高3の夏に体調が悪化して病院へ行くと、「脾臓が腫れている」と言われ、その日のうちに大きな病院に入院になったんです。ステロイドの大量投与で一命を取り留めたんですが、そのとき自己免疫性溶血性貧血と診断されました。

 自分の赤血球を自分の免疫抗体で破壊してしまう難病指定の病気で、私の場合、赤血球が正常値の3分の1ほどに減ってしまっていたんです。プレドニンはそのときからずっと飲み続けている薬。免疫を抑制する代わりに全身がむくむ副作用があって、体重が10~20キロくらい簡単に増えるんです。体調が安定していれば薬も少量で済むんですけど、疲れやストレスで体が免疫力を発揮すると、貧血がひどくなって2~3週間入院になります。これは一生付き合っていく病気なんですよね。

 子宮頚がんがわかったのは、それとはまったく別なことがきっかけでした。アニメの看板娘としてユニットで全国を回っていた2014年の夏、不正出血が続いていました。でも、「薬のせいでホルモンバランスが狂っているのだろう」としか思っていなくて……。ただ、地元の友達が卵巣の手術をしたと聞いたことで少し心が動き、「じゃ、行ってみるか」と思って子宮の検診を受けに行ったんです。

 検査結果は1週間後と言われたのに、それを待たずに病院から呼び出しがあり、「がんの陽性反応がありました。子宮頚がんになりそうな段階です」と告げられました。すぐに大きな病院を紹介され、別の検査をすると、今度は「お母さんを呼んでください」と言われたんです。いま考えても、それが人生で一番ショックな出来事でしたね。実家が京都だとわかっていてそれを言うということは、よほど悪いに違いないと察しました。

■毎日放射線、週1回は抗がん剤

 診断は「子宮頚がん1B1期」。これは「子宮全摘」を意味するものでした。それでも、「子供を産める可能性を残したい」とあがいて病院を転々としました。そして、4つ目の病院でこう言われたんです。「子供うんぬんではなく、生きることを考えなさい」って……。もう諦めるしかないと思いました。

 ただ、子宮全摘といっても持病のために手術はできないらしく、放射線治療しか選択肢がありませんでした。初めは入院しましたが、持病にがん治療の悪影響がないことがわかってからは通院になりました。約2カ月間、平日は毎日放射線、そして週1回は抗がん剤も併用しました。

 後半には、腔内照射という放射線を子宮内から当てる治療を受けたのですが、これが何より痛くてつらかった。出産の痛みが“鼻からスイカを出すくらい”だとしたら、その真逆。ものすごい圧迫感の痛みでした。

 医師や研修医がたくさん立ち会う中、分娩のようにヒーヒーフーフーと呼吸しながら、たくさんの器具をお腹の中に入れられるんです。しかも、麻酔なし! 照射の位置を固定して照射が終わるまで1時間、ときには1時間半もじっとしていなければなりませんでした。この治療はすごく嫌でしたね。

 そんな14年の年末を終え、「寛解です」と言われたのは年明け1月でした。マスコミで取り上げられることも増えましたが、可哀想に思われるのもキャラじゃないし、この経験をプラスにしたいと思ったんです。それで、自らがん検診の啓蒙活動をしている会に連絡してイベントに参加したり、学校での講演を始めました。

 周りからは「明るい」ってよく言われます。持病が全身性エリテマトーデスの症状の一部と判明したのは今年ですし、22歳で声帯結節、18歳のときには事故で外傷性くも膜下出血も経験していて、26歳ながら、なかなかの波乱人生です。それでも私が前向きなのは、前向きでいることが好きだからです。書いたり、話したり、部屋の模様替えをしたり、気分転換の方法をたくさん持っています。無理しても笑っていれば、「笑う門には福来る」ですから(笑い)。

▽なつめ・あき 1990年、京都府生まれ。2014年にアニメ「サクラカプセル」をPRする看板娘としてCDデビュー。同年に子宮頚がんが発覚するも、15年に復帰。現在、ユニット「おちゃめモンスター」でのライブ活動のほか、子宮検診の啓蒙活動も積極的に行っている。17年1月21日、神田MIFAにてワンマンライブ開催決定。