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75%のマウスが記憶回復 アルツハイマー治療に大きな進歩

 認知症の一種であるアルツハイマー病は、世界に4000万人の患者がいるといわれ、予防や治癒の発見が求められている病気です。それが2017年には大きな進歩を見せるかもしれません。

 最も期待されているのは、約1年前にオーストラリアのクイーンズランド・ブレーン・インスティチュート(QBI)が発表した治療です。

 アルツハイマー病の原因のひとつは、アミロイドというタンパク質の一種が脳内に蓄積することで発生するプラークといわれています。QBIの治療は、超音波による振動で一時的に血液脳関門を開くもの。マウスを使った実験では、プラークを取り除くことに成功。75%のマウスが記憶を回復したと報告され、大きなニュースになりました。

 QBIはいま、人間への臨床実験の準備を進めています。しかし、マウスよりずっと大きな人間の脳に超音波を送り込むためには、出力をずっと高めなければならず、脳細胞を傷つけてしまうリスクがあるため、そう簡単にはいかないようです。

 そこでQBIでは羊の脳と、3Dプリンターで形成した人間の脳を使った実験を行い、その一方でより進化した送波システムの開発も進めています。17年末までに約100人を対象にした臨床実験をスタート。うまくいけば5年後には一般の治療に使うことができるようになると報告されています。

 超音波を利用した治療法は世界中で研究されていますが、注目されているのはマイクロバブル(マイクロサイズの気泡)注射と組み合わせることでより振動効果を高めようとする方法です。

 また、ほかの研究ではこのマイクロバブルを使って注入した薬品を脳内のターゲットエリアだけに運ぶことで、アルツハイマー病やパーキンソン病を治療できる可能性があることも判明。医療関係者から熱い視線を浴びています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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