正しい歯磨きと唾液がポイント 正月明けの「口腔ケア術」

歯は健康の基本
歯は健康の基本(C)日刊ゲンダイ

 いよいよ今日から新たな年の始まりだが、正月休み中のお酒とごちそうで、胃腸が疲れ切っているという人も多いのではないか。しかし、ダメージは歯にも及んでいることを忘れてはいけない。自由診療歯科医で八重洲歯科クリニック(東京・京橋)の木村陽介院長に聞いた。

■暴飲暴食のダメージは胃腸だけではない

「正月明けに、歯を磨くと『歯茎が腫れて出血している』『歯がしみる』『歯が痛い』と、歯科医院に駆け込んでくる中高年は少なくありません」

 その多くは正月休み中の暴飲暴食が原因。「急性歯肉炎」や「知覚過敏」「虫歯」などを引き起こしているという。

「普段忙しい中高年の中には、『正月くらいはゆっくりしたい』とお酒と料理でお腹を満たし、ゴロゴロ寝ているだけという人は少なくありません。休み中で他人とも会わないので、歯磨きもおろそかになりがちです。そうなると急性歯肉炎になるだけでなく、歯の表面に細菌が付着して歯垢を形成し、食べ物に含まれる糖質で酸を作り出すようになります。この酸が、歯の表面のカルシウムやリンを溶かします。これが脱灰です」

 脱灰は虫歯の初期段階といえる状態で、歯が弱りつつある中高年に起きやすい。脱灰によりむき出しになった象牙質を、歯ブラシや冷たい水などが刺激すると知覚過敏を起こす。

「しかし、通常は脱灰が進行しても唾液が、細菌の作り出した酸を中和して洗い流し、溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻す働きをします。それが『再石灰化』と呼ばれる現象です」

■睡眠不足で唾液の質が低下

 ところが、一日中だらだらと飲食を続けていると、ただでさえ劣化している中高年の唾液の質はさらに悪くなり、分泌量も減っていく。結果、再石灰化が行われず、脱灰が進み、知覚過敏となる。やがては本格的な虫歯になってしまうのだ。

 しかも、正月休み中は夜遅くまで友達や家族などと話したり、テレビを見るなどして睡眠不足になりがちだ。

「口腔ケアの“守護神”である唾液は自律神経などに支配されていますが、睡眠不足だとそのバランスが崩れ、唾液はベタベタとして量も減ります。こうなると再石灰化はさらに難しくなり、口臭もきつくなります」

 この状態を改善するには規則正しい生活に戻して、歯磨きなど口腔ケアをしっかりすることなのだが、そもそも正しい口腔ケアを知らない中高年も多いという。

「夜寝る前に洗口液などで口腔内を殺菌し、朝起きたら水で軽くうがいをしましょう。寝ている間に口腔内に繁殖する細菌を減らすためです。歯磨きは毎食後するのは当然ですが、できたら電動歯ブラシを使いましょう。『磨き過ぎになるので電動歯ブラシは良くない』という意見もありますが、手で磨くとどうしても磨き残しが出ます。その方が問題です。ただし、研磨剤入りの歯磨き粉を使ってはいけません」

 コーヒー好きは歯の表面にコーヒーが沈着している。その場合は研磨剤入りの歯磨き粉を使って手で磨くといい。フッ素入りの歯磨き粉を使う人は、歯磨き後のゆすぎは少なめの水で1回だけにとどめる。せっかく歯の表面についたフッ素を洗い流さないためだ。

「最悪なのは急性歯肉炎や知覚過敏をキッカケに歯磨きに及び腰になり、歯をどんどんダメにすること。歯が悪いと糖尿病や心疾患にもなりやすい。ある意味、歯は健康の基本です。何もしていないのに痛みが出たり、歯茎から出血している場合は、すぐに歯科医院を受診すべきですが、そうでなければしっかり歯磨きをすることです。急性の歯肉炎や知覚過敏の多くは2~3日で元に戻ります」

 ちなみに唾液を増やすためには、「よく噛んで食べる」「舌を意識的に動かす」「ポリフェノールの一種である『ケルセチン』が多く含まれるタマネギを意識的に取る」「耳からあごにかけての唾液腺をマッサージする」といいという。

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